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LoveLetter 2
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Love Letter 2   サイド*masiro

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楽しく幸せな時間はあっという間に過ぎた。
「新居、近いから遊びに来てね」
手土産を渡しながら、海月さんが笑う。
「今度また、蒼吾くんと一緒におじゃまさせてください」
「…ええ。待ってるわ」
蒼吾くんのご両親と、四国のおばあちゃん達にも簡単なお礼と挨拶を済ませて帰ろうとすると、海月さんの旦那さんになった信吾さんが私達を呼び止めた。
「あれ。ふたりは二次会来ないの?」
「…あ。すみません。今日はもう」
断ると残念そうな顔をする。
「最後まで付き合えとは言わないから、少し顔を出さないか? ゆっくり話もしたいし…」
信吾さんは少し、酔っぱらってるらしかった。
断られたことに対して、強要する人じゃない。
新郎に用意されたお酌用のアルコールを捨てるバケツに、あまりお酒が入ってなかったって。
海月さんが心配してたのを思い出す。
そういえば信吾さん。
注がれたお酒には全部、律儀に付き合ってたっけ。
僕らのために祝ってくれた酒を捨てるなんて、幸せを捨てるみたいで嫌だ、って頬を紅く染めながら。
あまり強い方じゃないのになぁ、って苦笑いを浮かべる海月さんの顔は、でもそういうところが愛おしいんだってニュアンスを醸し出していて、ふたりの仲のよさを実感した。


「ごめんな、信にぃ。明日、早いんだ。また近いうちに顔出すよ」
「近いうちっていつだよ、蒼吾。明日か?」
「……なわけねぇだろ」
蒼吾くんがめんどくさそうに頭をかく。
面倒なことにつかまっちまった、そんな顔。
「遅くても、ゴールデンウイークまでには顔出すよ」
「えらく先じゃないか」
「俺も暇じゃねえから……」
「だったら、なおさら顔出して帰れよ。蒼吾がだめなら、ましろちゃんだけでもいいし…」
しつこく催促されて。
蒼吾くんの顔が少し、不機嫌になった。


「ましろだけとかって、それこそ無理だから。コイツ、人見知り激しいし」
「人見知りもなにも。知り合いだらけだろ?」
「コイツの知り合いはうちの身内だけ。だいたい、親族は二次会に来ねーし。ましろにとったら他人だらけじゃねーか」
「だったら蒼吾も…」
「だーかーらぁ、明日、早いから無理なんだって。寝坊とか、ありえねえから!」
蒼吾くんが私の背中を押した。
行こう、ってうながす。
いいの? 信吾さんこのままにしちゃっても…。
「水臭いこと言うなよ。僕はただ、今日の幸せを弟とその恋人と、分かち合いたいだけで…」
しゅんと、子どものように顔を伏せた信吾さんは、耳の後ろまで真っ赤だった。
熟れた林檎みたい。
そっか。
かなり酔っぱらってるんだ。
普段の真面目な信吾さんからは想像できない弱弱しい表情に、さすがの蒼吾くんも邪険にはできないと思ったのか。
帰りかけた足を止めた。
大きなため息を吐き出す。


「気持ちは嬉しいけど…。今日だけはマジでゴメン。また今度顔出すから」
それでも蒼吾くんの意志は強かった。
蒼吾くんがNOだと言えば、NO。
その頑固な性格は、信吾さんもちゃんとわかってるはずなのに、お酒が入ってるからてんでダメ。
なんだか気の毒になってくる。
「あの……、少しだけなら顔、出しましょうか? お酒は飲めないですけど」
思わずそう切り出したら、馬鹿っ、って小さく睨まれた。
だって…。
こんなに一生懸命なのに、断るのはなんだか申し訳なくて。
ちょっとだけなら…。

「ああ、もうっ、信吾さん?! なにやってるのよ、見苦しい! 絡まないでって言ってるでしょ」
別の招待客と話していた海月さんが戻ってきて、私たちの間に割り込んだ。
「また今度があるじゃない。蒼吾は私の弟なんだし」
「今度なんて言ってたら、いつ会えるかわからないじゃないか。だって蒼吾くんは」
「はいはい。わかってるなら、野暮なことはしないの!」
今のうちに行ってと海月さんが目配せをする。
「海月さん、私少しだったら……」
「いいの。気を使わないで。この人、酔っぱらってるだけだから。普段だったらこんな無茶は言わない。今日みたいな日にふたりを引き止めたなんて知ったら、あとで絶対後悔するから。信吾のためにも、行って」
「でも……」
「……今夜は蒼吾とお泊りでしょ?」
海月さんが私の耳元に顔を近づけて、嬉しそうに耳打ちした。
返事の代わりに、私の顔がみるみるうちに赤く染まる。
分かりやすくてイヤになる。


「ほら、蒼吾。さっさとましろちゃん、連れて帰って」
ぼやぼやしてたら本当に朝まで付き合わされるわよ?って、海月さんがちょっと意地悪に笑った。
「……サンキューな、姉貴。しばらく会えないけど…頑張れよ」
「そっちこそ」
「出戻ってくるんじゃねーぞ」
「アンタに言われたくなーい」
「……じゃあ、海月さん。今日はこれで」
私は深く頭を下げた。
「蒼吾。ましろちゃん、泣かすんじゃないわよ」
「そんなことしねえよ。バーカ!」
蒼吾くんは最後まで悪態ついて。
だけど海月さんに向けられた笑顔は、とっても柔らかであったかい。
親しい人にだけ向けられる、特別な顔。
お嫁に行っても、苗字が変わっても。
海月さんはこれからもずっと、蒼吾くんのお姉さんであることに変わりない。






クロークに預けておいた荷物を受け取って、式場を出る。
時刻は8時を回っていて、星はとっくに瞬き始めている。
3月といっても夜はまだ寒かった。
北風に肩をさすったら、蒼吾くんが首に巻いていたマフラーで冷えた体を包んでくれた。
あったかい。


「あーあ。信にぃ、もう姉貴に主導権握られてやんの。10も年上なのに、あれでいいんかね」
ふたりのやりとりを思い出しながら、蒼吾くんが肩をすくめる。
「主導権とかそういうの、どっちでもいいと思う。幸せそうだったから、ふたりとも」
幸せの形は、恋人の数だけ違うのよって。
いつか私が悩みを相談したとき、海月さんが教えてくれた。
背中を押してくれた。
あの時の言葉は、今でも私の心の根っこのところにちゃんと存在する。
「まあ、うちも父さんより母さんだったし。家族構成的にも圧倒的に女が多いから、夏木家はどうしても女が強くなるよな」
「蒼吾くんのお姉さん、私好きだよ?」
強くて、明るくて、優しくて、真っ直ぐで。
私もいつか、海月さんや葵さんみたく強くなりたい。
なれるかな?
聞いたら、蒼吾くんが苦い顔をした。 
「いや、そこ。見習わなくていいから。つか、あいつらを手本とか、絶対やめて」
心底嫌そうに顔を歪めた見せた蒼吾くんがおかしくって、また笑った。

自販機で飲み物をふたつ買って、そのうちの一本を蒼吾くんから受け取る。
熱くて甘いミルクティー。
口に含んだら、ホッと顔が緩んだ。
リングプルを開けながら、蒼吾くんが私を見下ろした。
「つか、ましろ。俺すげえ心配なんだけど」
「うん?」
「お前のお人よしなのと、流されやすいのと、人をすぐ信じる性格。いつかそれが裏目に出て、取り返しのつかないことになっちまうんじゃないかって、俺はすげえ心配で…」
「だけどやっぱり、人を疑うよりもまず信じたいから……」
思ったことを素直に口に出す。
蒼吾くんがじっと私を見つめて、大きなため息をついた。
「……ま、そういうところがましろなんだけど」
しょうがねぇよなぁって、ポンポンと頭を撫でて笑う。
ちょっと唇の端を持ち上げた微笑み。
じっと見つめられて、頬が熱くなるのを感じた。

「蒼吾くん、なんか保護者みたい」
「心配なんだよ、いろいろと。お前、危なっかしいから。ふわふわしてて、風船みたいだし。ちゃんと紐、つかまえてないと不安で。怖くて」
「間違ってたら、軌道修正してくれるんでしょ? 蒼吾くんが」
ずっと前に、そう言ってくれたよね?
「してやるけど。でもそれは、もしもの話で。やっぱり棘の道より、無難で安全な道を歩んで欲しいって思うだろ?」
「心配性だなぁ…」
「悪いか」
「悪くないよ。嬉しい…」
幸せを噛締めた横顔に、蒼吾くんの唇が優しく触れる。
空いた方の手をそっと握られた。



「……手、あったかいな」
「紅茶があったかいから」
「俺も、ぬくいやつにすればよかった」
「……寒いのにサイダーとか、ありえないよ」

蒼吾くんが買ったのは、冬なのに絵柄が夏仕様のサイダー。
寒くないのかな。
でもそれが、あまりに蒼吾くんらしくて、似合いすぎて、笑っちゃう。
「俺、珈琲とか紅茶とか、苦手なんだよ。どっちも独特な口に残るような苦味、つうの? あれがどうにも苦手でさ」
「私も珈琲はダメだけど……、紅茶は甘くておいしいよ?」
「それはましろの顔見てたらわかるけど」
また唇が軽く触れる。
今度は唇に。
「甘い。けど、苦い…!」
そんなの。
キスしたあとに、言わないでほしい。











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LoveLetter comments(8) -
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Comment








二人のほんわかしたやりとり、読んでて嬉しくなっちゃいます。

今日も更新が読めて嬉しい〜〜〜!!(笑)
from. まめ | 2011/10/21 15:22 |
*まめ様*
娘の参観日から帰ってまいりました。
ていうか。
まめさま、チェック早ーい(笑)
嬉しくなりました。
初々しかったふたりも、少しずつ成長してるみたいです。
from. りくそらた | 2011/10/21 15:44 |
初めてコメント書きます、クローバー♪です。
まほコトは全て読みました。
すっごく面白くて、続きがどんどん気になっちゃって。
1度読むとやめられません!(笑

今回の続編・・・待ってました。2人も18歳みたいで、もう大人ですね。2人の成長が楽しみです。更新を楽しみに待っています^^これからも頑張って下さいね(・ω・#)/
from. クローバー♪ | 2011/10/21 20:52 |
*クローバー♪様*
はじめまして!
まほコト、プッシュありがとうございますー。

ふたりとも高校を卒業して、大人への階段を登り始めました。
いろいろ試練が待ち構えてるぞー(笑)
長編を予定してます。
最後までふたりの成長を見守ってやってくださいね!
from. りくそらた | 2011/10/22 08:10 |
もう、高校卒業して
どんどん大人になっちゃいますね

でも、そんなましろちゃんたちが
可愛(かわい)過ぎる(//′ω`//)

蒼吾くん、ましろちゃんに
甘々なことしてますねぇ……(笑
from. くう | 2011/10/22 15:18 |
コメント有難う御座います^^
あ、長編ですか。ますます楽しみ〜・ω・

はいはい、見守りますとも!
ましろ&蒼吾くんのラブラブシーンはキュンキュンきちゃいます(笑

ましろ&蒼吾くん大好きです!!
from. クローバー♪ | 2011/10/23 00:11 |
*くう様*
こちらにもコメントを……ありがとうございます!

蒼吾にしても、ともひろにしても。
うちの男共は、恋人に対して甘いのかも(笑)
そして過保護です(苦笑)
from. りくそらた | 2011/10/23 22:52 |
*クローバー♪様*
>ましろ&蒼吾くん大好きです!!

ありがとうございます!
その言葉で、次の更新も頑張れそうです。
from. りくそらた | 2011/10/23 22:54 |
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