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魔法のコトバ*  Season1 再会-4-
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魔法のコトバ* Season1 再会-4-

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翌日、なかなか起きられなかった。
気持ちがどうしても前へ行かない。

転入早々「休みたい」だなんて。
心配させるようなこと、言えなくて。
重い足どりで家を出た。
駅まで歩いて、そこから電車で二駅。
同じ学校の生徒達が、どんどん電車に乗り込んでくる。
見慣れない制服を着た私を、横目でチラチラと見ながら。
凪ちゃんと待ち合わせて行けばよかった。
今さら、すごく後悔。

ふたつ駅を通り過ぎて、制服の波に流されるまま電車を降りて、改札を出た。
制服の流れはどんどん学校へ向かうのに、私の足は動かない。
横腹が、ちくちく痛む。
このまま引き返して家に戻ったら、ママがまた心配しちゃうかな。
でもこのまま、道端で倒れちゃうよりはいいのかも。
うん、そうだよ。
こんな気持ちで学校なんて行けない。
また気分が悪くなって、迷惑かけちゃうよりはよほどいい。
今日は家に戻って、凪ちゃんに電話して、明日は待ち合わせて一緒に行こう。
それならいけるかもしれない。
……あ。
でも、凪ちゃんの電話番号って知らない。
家は昔と変わってないのかな?
そもそも小学校のクラス名簿なんて残ってたっけ?
携帯の番号だって、知らないし。
ていうか私も、帰国したばかりで携帯、ないんだった………。



いろんなことが頭の中でぐるぐる回って、どんどん気持ちが悪くなってきた。
考えれば考えるほど、追い詰められる。
「ほんとに、やばいよぉ……」
思わず路地の端に座り込んだ。
駅に引き返すどころか、このまま倒れれてしまいそうなぐらい、気分が悪い。
ふわふわと地に足がついてないような感覚。
また電車で揺られて帰るより、学校へ行って保健室で横になる方が早いかも。
そう思って電柱に掴まって立ち上がろうとしたら、グラリと体が揺れた。
視界が歪む。
ヤバイ。
ここで倒れたら、救急車で運ばれたりしちゃうのかな。
それって、めちゃくちゃかっこ悪くない?
原因は、登校拒否で神経性の腹痛?
また学校で、変な噂が広がっちゃうよ…。
それだけは絶対にイヤだ。
頑張れ、ましろ──────。
そう思うのに、それを想像するとますますお腹が痛くなった。


──────ヤバイ、意識飛びそう……。






そう思った瞬間。
「──────大丈夫かよ」
頭の上から声が降ってきた。
「………大丈夫か?」
もう一度、声がした。
それと同時にゆっくりと腕を引き上げられて、体が起される。
「腹、痛いのか?」
かろうじて意識を保ったまま、こくりと頷いた。
「学校まで我慢できるか?」
低い男の子の声。
私はのろのろと顔を上げた。
白い開襟シャツに黒いズボン。胸のポケットには青葉台南の校章。
………同じ学校の人だ。
逆光で顔はよく見えないけれど、短髪の似合う爽やかな人。
「自転車の後ろ、乗れるか?」
同じ学校の人が聞いた。
「……はい…」
なんとか………。
私は頷く。
とりあえずこの人の好意に甘えて、学校まで連れて行ってもらおう。
それから先の事は着いてから考えればいい。
「しっかりつかまってろよ」
私を自転車の後ろに乗せて、その人はゆっくりとペダルを漕ぎ出した。
私が落ちないように、ゆっくりと自転車を進めてくれる。
なんだ。
同じ学校に、こんな優しい人もいるんだ。
そう思うと少しだけ、お腹の痛みが和らいだ気がした。
大きな背中が、とても温かかった。










その後のことは、あまりよく覚えてない。
着いてからはすぐに保健室へ行ったし、お腹が痛くて気分も悪くて。
とにかくそれどころじゃなかった。
お礼もろくに言えないまま、男の人は私を降ろすと自転車置き場の方へ去って行ってしまった。
同じ学校だから、またどこかで会えるよね?
大きな背中を見送りながら、ぼんやりとそんなことを思った。


結局。
保健室で横になったまま、気がついたのはお昼過ぎ。
今日は職員会議の都合で午前中で終わる。
廊下や校庭がざわざわと騒がしくなった。
「──────ましろ。大丈夫?」
カーテンが開いて凪ちゃんが顔を出した。
「朝と比べると、ずいぶん顔色よくなったね」
私の頬にそっと手を当てた凪ちゃんが、安堵の笑顔を浮かべた。
「……心配かけてごめんね」
「なに水臭いこと、言ってんの」
明日は一緒に行こうね、凪ちゃんが笑う。



「そうやってお前が甘やかすから、いつまでたっても自立できないんだろ」

突然。
カーテンの向こうから硬質で低い声が聞えた。
え? 誰?
凪ちゃんだけじゃなかったの?

「鞄。持ってきた」
白いカーテンの向こうの大きな影が揺れた。
そういえば私の鞄──────。
朝、自転車の前籠に乗せてもらって、その後どうしたんだっけ。
あれ。
記憶にないや。

「ましろ、鞄」
あ、私の……。
「自転車に忘れていったでしょ?」
え。
じゃあ鞄を持ってきてくれたのって、今朝の……。
お礼、言わなくちゃ。
私は慌ててベッドから体を起こした。


「あのね、ましろ。今日は一緒に帰りたかったんだけど……この後、クラス委員会があるんだ。だから帰れなくて…。
だから代わりに助っ人をお願いしてきたよ。知ってる人の方がましろも安心でしょう?」
え。
助っ人ってなに?
自転車の人、凪ちゃんの知り合いなの?
ていうか、私の知ってる人って、誰?
ひとりしか、思い浮かばないんだけど………。
ああ、すごく嫌な予感。





「朝も乗せてきてもらったんだって? ついでに帰りもお願いしといたから。ね、蒼吾──────」









蒼吾?








今。

蒼吾って、言ったよね?






私の、聞き間違えじゃなくて?








「日下部さん。ここにいたの? 委員会始まるって、先生が探してらしたわよ。早く行きなさい」
戻ってきた保健の先生が凪ちゃんを見つけて声を掛けた。
「園田さんは大丈夫? もう下校時間だから帰っていいんだけど……ひとりで大丈夫かしら? 送って行こうか?」
「あ、彼に頼みましたから大丈夫です」
凪ちゃんがさらりと断った。
うわ〜〜。余計なことを…ッ。
泣きそうな私の心境なんて、保健の先生は気付くはずもなく。
それならよかったわ、と。優しく笑って日誌をつけ始めた。
「じゃあましろ、気をつけて帰ってね。
あ、これ私のケー番とメアド。ましろのもまた今度、教えて!」
じゃあ後はよろしく、って。
凪ちゃんは彼に私を託して、早足で保健室を出て行ってしまった。
嘘デショ。



──────あ、悪夢だ……。
また明日も学校行けなくなっちゃうよぉ。
凪ちゃんのバカっ。



私は人の恩をあだで返すような言葉を心の中で呟いてみたけれど。
弱虫な私には、どうすることもできなくて。
結局。
彼のお世話になって、帰ることになってしまったのだ。




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