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魔法のコトバ*  Season2 初恋-1-
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Season2 初恋-1-

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初めて蒼吾くんに出会ったのは7年前。
小学校3年生のとき。
この頃の私はやっぱり気が弱くて、泣き虫で。
嫌なことを頼まれても断れない性格は相変わらず。
ちょうどその日も、花の水やり当番を押し付けられて。
口には出しては言えない文句をブツブツと心の中で呟きながら、夕暮れの校庭裏でみずやりをこなしてた。


大き目のじょうろに水を汲んでそれを両手で持ちあげて、花に水をあげる。
背の低い私にとって、6年生も使ってるじょうろは結構大きくて、水をいっぱい入れるとフラフラしちゃう。
でも半分の水だと、何度も往復しなきゃいけないし。
それなら重くても回数が少ないほうがいいかな、って。
重さで手が震えながらも私は頑張ってみずやりをしてた。


3度ほど花壇と水汲み場を往復して、あと1度で終わり。
安堵に大きなため息をつきながら水道から顔を上げると、向こうから男の子が走って来るのが見えた。
チラチラと後ろを気にしながら走ってきた男の子が、ふとこちらを振り向き私を見た。
視線がぶつかる。
すぐにそらされるかと思ったその視線は、外されることがなく。
痛いぐらいにじっとこっちを見つめてきた。




…な、なに………?

強い視線に耐えられなくなった私は、あからさまに顔を背けて、手元に視線を落とした。
まだ…見てる?
それどころか、近づいてきてる!?
気配がどんどん近づいて、俯いた視界に男の子が履いたスニーカーのつま先が見えても、怖くて顔を上げられなかった。





「……あのさ」

男の子が口を開こうとしたとき。



「夏木ーーーっ!?」
数人の足音と、誰かを探す声が校舎の向こうから聞えてきて。
「うわ、やべっ」
男の子は声のした方を一瞬振り返ると。
「悪い!ちょっと隠れさせて!!」
手洗い場の下に隠れ込んだ。


「えっ…!?」
私は咄嗟にスカートの裾を押さえた。
そして手洗い場の下を覗き込む。
そしたら、
「シッ!」
って、男の子は自分の口元に人差し指を当てた。
黙ってろって。

何…?

顔を上げると女の子達が3人、こちらに走ってくるのが見えた。
きょろきょろと誰かを探してる。
そのうちのひとりと目が合った。


「ねぇ、こっちに男子来なかった?」


この人の事だ。
とっさにピンときたけれど、何て言っていいのかわからなくて。
思わず。
「あ…あっちに行ったよ」
そう答えてしまった。
「あっちだって!」
「もう! 夏木のヤツ、逃げ足だけは速いんだから!!」
「ありがとねっ」
女の子達は文句を言いながら私にお礼を言うと、私が指差したグランドの方へ走って行った。


何がなんだかわけが分からず、私は口をぽかんと開けてその背中を見送った。
足音も気配もしなくなったぐらいに、
「…行ったか?」
男の子が水汲み場の下から聞いてきた。
「…うん」
私が小さく頷くと、よろよろと這うように出てくる。
「さんきゅ。助かった」
男の子は膝や腰についた泥を払うと無邪気な笑顔を向けた。
どうして追いかけられてたの?
私の口からその言葉は、簡単には出てこなかった。


「花のみずやり?」
私はコクンと頷いた。
それが精一杯。
「ひとりでやってんの?」
こくん。
「ふうん」
じーっと私を見つめる視線が痛い。
どうして?
なんでそんなに私を見るの?
「そんなのテキトーに済ませちゃえばいいのに」
「……」
そんなのできないよ。
私はもうとっくに汲み終ったじょうろを両手で持つと、残りの花壇に水をやりに行く。
歩くたびにチャプチャプと水が跳ねて、服を濡らす。
「真面目なヤツだなぁ。貸してみ」
「あ…っ」
男の子は私の手からじょうろを奪い取って、残りの花壇に水をかけた。
あんなに重かったのに。
この人が持つと、そんな風に見えない。
体格は私とあまり変わらないのに……。
「ほらよ」
からっぽになったじょうろを渡された。
「さっきの礼」
「え?」
「さっき、黙っててくれただろ? それの礼だよ」
黙ってた、って。
そんなつもりは更々なかった。
お礼を言われるようなことはしてないのに。
「なぁ。それ」
「?」
「それって、パーマか何か当ててんの?」
「…あ…」
髪のことをゆってるのはすぐに分かった。
今までも何度もいろんな人に聞かれたから。


私の髪の毛は、ちょっとくせっ毛で、それでいて色素が薄い。
黒じゃなくて栗色に近い茶色。
もちろんカラーリングもパーマもしてない。
私のおじいちゃんは外国の血が混じってて。
いわゆるハーフってやつで。
その血が混じってる私は目の色だったり髪の色だったり、ちょっと人より色素が薄いんだ。
人とは違う外見のおかげで、目立ちたくなのに目だってしまう。
そんな自分の髪や目の色がすごく嫌いだった。


「……何も、してないよ…」
男の子がやけにジロジロと見る理由がわかった。
また髪の事で何か言われると思ったら。
私は顔が上げられなくなった。




「可愛いじゃん」









え?



「フワフワしてていいじゃん、それ」








そんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
顔を上げて男の子をじっと見つめる。




「いいよ、それ。お前にすげえ、似合ってる!」



そう言って笑ってくれた男の子の言葉は、お世辞やたてまえなんかじゃなくて。
ほんとうに心からそう思ってくれてるようなそんな笑顔だったから。
すごくドキドキした。
コメカミの辺りが、キュウって痛くなる。

なんだろ…これ。






「あ、夏木ーーーっ!! いたーーっ!!」

「うわっ、やべ!!」
男の子はびっくりしたようにふり返ると。
「じゃあな!!」
軽く手を上げて逃げるようにその場からいなくなった。


「待ちなさいよ!! 人に日直の仕事を押し付けてにげるなんてサイテーじゃん!!」
女の子達がバタバタと目の前を走り抜けて行く。



あれ…?
なんだ。
あの子も日直をさぼって、女の子に追いかけれてたんだ。
うちのクラスの男子と一緒じゃない。
それなら庇わない方がよかったのかな。



そう思いながらも。
男の子の言葉が耳から離れなくて。
しばらく耳に残って、忘れられなかった。





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