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魔法のコトバ*  Season1 再会-1-


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Season1 再会-1-

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また、この街に帰ってきた─────。


そんなことを考えながら、ちょっと固めのレザーのソファーに腰かけて。
窓から見える外の景色をぼんやりと見つめた。
高台から見下ろす景色は、遥か向こうに青い海が見える。
夏の終わりの海は、まだまだ青く澄んでいて。
日差しをキラリと跳ね返した。

「──────ましろ!!」

私を呼ぶ声と同時に肩肘でつつかれて、ハッと我に返る。
ママが眉根に皺を寄せて、私を睨みつけていた。

ここは学校。
しかも転校初日。
今日から新しい高校での新生活が、始まるところだった。
向かいのソファーに目を向けると、校長先生が私をじっと見据えていた。
柔らかい雰囲気を身にまとう眼鏡をかけたおじいちゃん。
もう2〜3年もすれば定年を迎える。
そんな感じの年齢だ。

「ちゃんと、聞いていたの?」
ママが呆れた声で、私の耳元で囁いた。
「……うん…」
とりあえず頷いた私に。
「何か、質問はないですか?」
校長先生はもう一度、優しくそう聞いた。
「ありません…」
「そうですか。それならよかった」
安心させるように校長先生はにこりと笑うと。
「それでは担任に、クラスへ案内させましょう」
そう言ってソファーから立ち上がった。
「よろしくお願いいたします」
ママが立ち上がって深々と頭を下げた。
私も慌てて立ち上がって、同じように頭を下げた。




私。
園田 ましろ(ソノダ マシロ)。

真っ白な心で素直に育ちますように。
そんな願いを込めて両親がつけてくれた名前を私は結構、気に入ってる。
でも。
名前のことで、小さい頃はからかわれたり、いじめられたりもした。
『真っ白ましろ』とか。
『しろしろお化け』とか。
子どもじみた中傷だけれど、私は結構、傷ついた。
おかげで小学校時代は、いい思い出がない。
パパの仕事の都合で、小学校の途中で海外赴任が決まって。
4年半ほどサンフランシスコのアメリカンスクールに通った。
今年の夏に海外勤務も無事終了して、先週、日本に戻ってきたばかり。
海外での生活にもようやく慣れたのに、また日本での生活。
空白の4年間は大きいよ…。


「先に帰っておいしいものを作って待ってるから。頑張って」

優しくそう言い残して、ママは先に帰ってしまった。
引っ越してきたばかりで、荷物の整理や公共の手続きとかで。
まだいろいろと忙しいみたい。
ほんとは心細くてしょうがなかったけれど。
もう子どもじゃないんだから、一緒にいてなんて恥ずかしくていえなかった。


「うちのクラスは個性的だがいい奴ばかりだぞ〜」
長い廊下を男性教師の後に着いて歩く。
がっちりと体格のいい新垣先生。
今日から私の担任になる。
30代半ばぐらいかな。
出席簿を持った左の薬指の指輪が、キラリと光る。
去年結婚したばかりで新婚ほやほやなんだって、言ってたっけ。
廊下ですれ違うたびに、みんなが私を振り返る。
制服が違うから、転入生ですってアピールしてるようなもの。
緊張が加速して動機が激しくなるのを誤魔化すように、胸のリボンを握りしめた。
しっかりして、私。

「制服は間に合わなかったんだな。いつできるんだ?」
「来週の頭には…」
「そうか。しばらくは居づらいかもしれんが…ま、制服が来る頃には慣れるさ」
そう言って新垣先生は白い歯を見せてにこりと笑った。
制服が来る頃には、って。一週間だよ、一週間。
だからママにも言ったのに。
制服が出来上がってから、新しい学校に行きたいって。
でもママは、ただでさえ途中編入なんだから、せめて学期の初めから行きなさいって。
頑として聞き入れてくれなかった。
目立つのは嫌なのに…。
瞼の奥がじわりと熱くなるような気がして、私はきゅっと唇を噛み締めた。


「ここが教室だ」
新垣先生は教室の入り口で立ち止まって、私を振り返った。
『1-C 新垣学級』表札にはそう記されてある。
扉の向こうから漏れ聞こえるざわざわした空気に、ますます緊張が加速する。
足が震える。
「まあ、みんなそれぞれが違う中学から来たんだ。園田もすぐに打ち解けられるさ」
爽やかに微笑んで、新垣先生は勢いよく教室のドアを開けると。
「おーーーーい!席につけ〜〜。HR始めるぞ!!」
よく通る声で叫んだ。

半年って大きいよ、先生。
それだけあれば、仲のいい友達とかグループとか、とっくにできちゃう。
励ましたつもりの言葉が、ますます私を暗い気持ちにさせた。
みんなと半年遅れてのスタートライン。
やっていけるのかな、私。


「新学期早々、嬉しい知らせだ。喜べ男子、転入生だ──────!」
おおおお!!!と声が上がる。
教室が大きくざわめいたのが分かった。
うそ。
新垣先生、余計なことを…。
そんな演出はいらないのに。
緊張しすぎてお腹がちくちく痛いし、目が回る。気分が悪い。
その場に座り込みそうになるのを私はグッとこらえた。
「園田、入っていいぞ」
教室の中から先生のお呼びの声がかかった。
私は震える足を恐る恐る伸ばして、教室に踏み込む。
教室が、一瞬ざわめいた。
その場から逃げ出したい衝動をグッと我慢して、教壇の前まで足を進める。
緊張と恥ずかしさで、顔が上げられない。
クラスメイトの好奇心の視線が、体中に突き刺さる。

「園田ましろ──────だ。
親の仕事の都合で4年ほど海外で暮らしていたが、この夏戻ってきたそうだ。小学生時代はこっちで過ごしているから、もしかしたら知ってる奴もいるかもしれんな。仲良くしてやってくれ。」
そう言って先生は私の肩に手を置いた。
「園田、何かひと言、言うか?」
「………」
私はふるふると首を横に振った。
涙目になっているのを気付かれないように、下を向く。
「そうか。それなら席は──────委員長!」
「はい」
誰かが手を上げたような気配がした。
「始業式が終わったらいろいろと案内してやってくれ。席は委員長の隣でいいな?」
「…はい」
「じゃあ教科書がそろうまで、日下部に見せてもらえ。……園田…?」




──────おい。大丈夫か?

先生の声が上から降ってきた。
大丈夫です──────そう答えたつもりが。


声にならないまま、私はその場に崩れるようにうずくまってしまった。



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