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魔法のコトバ*  Season1 再会-5-
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魔法のコトバ* Season1 再会-5-

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前を歩く彼、蒼吾くんの後を重い足取りで歩いた。
早足で歩く彼に置いていかれないようについていくだけで、息が上がる。
きっとこの人は、気付かない。
私が、精一杯なこと。
このまま、蒼吾くんが後ろに気付かないうちに帰ってしまおうか……。
でもそんなことをしたら、きっと気を悪くしちゃう。
あとで何を言われるか、わかんないし。
だってあの、蒼吾くんだもん。
私は自分の甘い考えを振り払うかのように、ふるふると頭を振った。
「──────早く来いよ」
立ち止まった私に気付いて、蒼吾くんが足を止めて振り返った。
有無を言わせない強い視線で睨まれて、慌てて小走りで駆け寄った。
それを確認した蒼吾くんはため息をついて、また歩き出す。
……あ、れ?
なんだ。
ちゃんと後ろを気にしてくれてたんだ。
蒼吾くんの大きな背中を見ながら、ぼんやりと考えた。




自転車置き場から深い藍色の自転車を引っ張り出して、蒼吾くんが鞄を前籠に入れた。
……あ、これだ。
今朝、乗せてきてもらったのはこの自転車。
気分が悪かったけれど、自転車の色はよく覚えてる。
深い藍の色がすごくきれいで、珍しい色の自転車だなって思ってたから。
じゃあやっぱり、今朝の人は蒼吾くんに間違いなかった。
カケラも気付かなかったなんて、ちょっと愕然とする。

「鞄」
蒼吾くんが手を差し出した。
私は首を横に振る。
「…やっぱりいいよ。もう大丈夫だから、ひとりで帰れる」
「いいから貸せって」
「でも……。うち、二駅先だし、遠いから………」
「たった二駅だろ。俺んち三駅向こうだから」
「………」
「いいから貸せって──────」
黙り込んだ私の手から、蒼吾くんが鞄を奪い取って、乱暴に前籠に詰め込んだ。
これじゃあ、途中で逃げ出すなんて無理だ。
無理矢理逃げ道を取り上げられたような状況に、じわりと目頭が熱くなって涙が浮かんだ。
だめ、泣いちゃだめだ。

逃げることは諦めて、蒼吾くんの後ろについて歩く。
カラカラカラって、自転車のチェーンの音だけがやけに耳につく。
やだな、この沈黙。
重苦しい雰囲気に耐えられないけど、特に話題もなくて。
ただ黙って、蒼吾くんの後をついて歩くしかなかった。
このまま二駅も歩くのかな。
そんなの耐えられないよぉ。
そうだ。
駅まで送ってもらって、そこからは電車で帰るって言えばいいんだ。
蒼吾くんだって、二駅も歩くのなんて嫌だと思うし。
それがいいよ。
角を曲がって、駅が見えたら切りだそう。
私は意を決した。

駅が見えた。
よし、言うんだましろ──────!






「あの……っ」

「乗れよ」







え?


「二駅も歩くの嫌だろ?」
だから電車で帰ろうと思って……。
「後ろ、乗れって。乗せてってやるから」
私は首を大きく横に振った。
そんなに振ったら首が折れちゃうんじゃないかってなぐらい激しく。
「いい! いいよ、夏木くん。
あとは電車で帰るから……大丈夫。ありがとう」
顔も見ないで、鞄を籠から取ろうとした。
でも、それはびくともしない。
え? と思って振り返ったら、蒼吾くんが鞄を押さえつけてた。
離そうとしない。
どうして?

鞄を押さえてた手に突然、腕を取られた。
びっくりして顔を上げた瞬間、がっちり蒼吾くんの視線につかまって、逃げられなくなった。
恐怖で鼓動が加速する。
「──────乗れって言ってるだろ?」
蒼吾くんが低い声でそう言った。
顔がめちゃくちゃ真顔。
険しい表情を緩めないまま、無愛想に私を睨みつける。
う……。
コワイ………。






「……の、乗ります………」


押しの強い真っ直ぐな瞳に、私は負けてしまった。





「──────つかまってろよ」
私が後ろに乗ったことを確認すると、蒼吾くんは勢いよく自転車を漕ぎ出した。
……掴まってろって、どこに?
私は泣きそうになって、サドルの下のところにちょこんと手を添えた。
彼女でもないのに、気軽に体になんて触れない。
わかってんのかな、そういうコト。
ていうか。
今朝は蒼吾くんのどこに掴まってきたんだろう。




………あれ?

そういえば。
今朝、蒼吾くんは座り込んでる私に『腹が痛いのか?』って聞いてきた。
普通は『気分が悪い?』って聞くよね?
それに学校の名前も聞かず、乗せて行ってくれた。
普通は『どこの学校?』とか聞くよね。
だって制服違うし。
じゃあ明らかに私だって分かっていて、声を掛けてくれたんだ。

自転車をこぐ蒼吾くんの背中を見上げた。
男の子の中では決して大きい方じゃなかったのに、四年の間に随分背が伸びたんだね。
広い肩幅、逞しい背中。
凪ちゃんじゃないけれど、成長期の四年ってホント大きいんだ。
私は広い背中を眺めながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。



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