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魔法のコトバ*  Season2 初恋-3-
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魔法のコトバ* Season2 初恋-3-

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4年生になって。
クラス替えがあった。
新しいクラスは1組。
教室に入ると、みんな新しいクラスの話題で盛り上がっていた。
同じクラスになれた喜びを分かち合ったり、クラスが離れた友達の事を悲しんだり。
担任の先生は誰になったんだろうって話したり。
新しいクラスで迎える新学期に期待で胸を膨らませている、そんな感じ。
私は。
特に仲のいい友達と同じクラスなれたわけでもなく。
どちらかというと新しい環境になじめず不安の方が大きかった。
春は苦手。
新しい環境に自分から飛び込んでいくことが苦手な私にとっては、何もかも新しくなる春はあまり好きじゃなかった。




新しい教室を見回して空いている席を探した。
しばらくは、最初に座った席のまま新学期がスタートする。
だから最初の席取りって重要なの。
クラスの大半は新しいクラスメイトに気を取られているから、まだいくつか席が空いてる。
「あ」
窓ぎわに空席を見つけた。
前から2番目だけど、外が見える特等席。
私は一度、窓の外を確認してからその席に座った。
去年の3学期も窓際だった。
たまに体育の授業で蒼吾くんが見えたっけ。
今年も見れるかな。
なんて考えながら、ぼんやりと外を眺めていたら。


「なぁ。ここの席、開いてる?」


ふいに声を掛けられて顔を上げた。
その瞬間。
私の体が硬直した。









───蒼吾くんだ。


もしかして…同じクラス?






「この席いいか?」
なかなか答えの返ってこない私に痺れを切らせて、蒼吾くんがもう一度聞いた。
「…あ、うん」
小さく頷いて、私はそのまま下を向いてしまった。
顔が熱くて上げられない。
あまりに不意打ち過ぎて、きっと真っ赤だ。
「じゃあ、遠慮なく」
そんな私を気にするでもなく、蒼吾くんがドカッと隣の席に腰を降ろした。






うそ…。
何で蒼吾くんが私の隣に?
他にも席、いっぱい空いてるよ?
バクバクいってる心臓の音が聞こえるんじゃないかってぐらいドキドキしてた。
蒼吾くんは身の回りの荷物を机の中に整理すると、何やら1枚の紙を取り出し真剣に書き始めた。
カチカチって。
シャープペンの芯を出す音が鼓膜に響く。
空色のシャープペンが掌の上で、くるくると器用に回るのが見えた。

話かけた方がいいのかな。
でも、何を話したらいいの?
同じクラスになったことがないから、蒼吾くんは私の名前も知らない。
なのに私だけが名前を知ってるのって、やっぱ変だよね。
特別───みたいに取られたら、やだな…。
…あ。
あの時の事。
みずやり当番で花に水を上げていた放課後の事、話してみたら?
でも、覚えてなかったら……。





「あ、蒼吾くん!同じクラスだったんだ〜!!」
女の子が何人か近寄ってきた。
「…また、お前らと一緒かよ…」
うんざりした声に、私もつられて女の子達を見上げた。







…あ。



あの時の子達だ…。




初めて蒼吾くんに会った時に探していた子達。
同じクラスなんだ…。
聞こえてくる会話から、去年も同じクラスだったのがわかる。
楽しそうな様子にちょっぴり羨ましいなと思いながらも、私が話しかけなくてよかったって、胸をなで下ろした。





「それより。何でこの席なの?前から2番目じゃん。後ろの席、まだいくつか空いてるよ?一緒に座ろうよ」
ひとりの女の子が蒼吾くんの腕を掴んだ。
ふたつに髪を結い上げた気の強そうな女の子。
「いいよここで」
「え〜〜。何でぇ?」
女の子はそう言って頬を膨らますと、チラリと私を見た。

うっ。
思わず下を向いてしまう。
何だか私が悪いみたいな視線。
私が望んで隣になったわけじゃないのに…。
じわり、涙が浮びそうになる。
席、移動した方がいいのかな。







「何でこの席なの?」

「ここがいいんだよ」



無言の視線が私に注がれる。
あきらかに私を見てる。
すごい威圧感。
席をゆずってとばかりの強い視線。







「ねぇ…」

女の子が私に口を開きかけたのと同時。
「おーい!席に着け〜!!朝の会を始めるぞ!!」
ガラリと前の扉が開き、出席簿を手にした男の先生が入ってきた。
どうやらこのクラスの担任の先生みたい。
「先生来たぞ」
蒼吾くんは私の前に立つ女の子に声を掛けた。
「もうっ!」
女の子は怒ったように呟くと、じろりと私を一瞥してから諦めたように空いていた席に戻っていった。
見下したような視線。

…やだな。

思わず下を向いてしまう。
何だかお腹、痛いな。
私はそっとお腹に手を当てた。








新しいクラスの先生は茂野先生っていう男の先生で、野球部の顧問だった。
熱血の体育会系っぽい先生。
何だか私と合いそうにないな、とぼんやり憂鬱になる。
「なぁ」
ふと蒼吾くんが声を掛けてきた。
私はびっくりして、体を縮こまらせた。
なに?
ドキドキを彼に悟られないようにゆっくりと隣に顔を向ける。
自分の方を向いたのを確認した蒼吾くんが、先生に気付かれないようにそっと窓の外を指差した。






「桜。今、すっげー綺麗」




蒼吾くんが指差した方向に目を向けると、校門から校舎へと続く桜並木が見えた。
桜の花びらがひらひらと舞い落ちて風に舞う風景が視界に飛び込む。
薄紅色の幻想的な世界。
まるで映画のワンシーンのような風景に、思わずため息が零れた。




「ここって外見えるじゃん? 俺、授業中に外見るの好きなんだ」







あ。


だから?
だから…窓際にこだわってたんだ。







「な。きれいだろ?」





蒼吾くんが笑った。



くしゃって。
顔をくしゅくしゅにしてはにかむ笑顔。
あの時の。
ホームランを打った時の嬉しそうな笑顔とよく似てる。
この笑顔は今、私だけに向けられているんだなって思うと妙に嬉しくて、胸の奥がぎゅってなった。
頬が熱く、赤くなるのがわかって。
それを蒼吾くんに気付かれたくなくて、下を向いた。
蒼吾くんがまた笑って、窓の外の風景に視線を返す。
彼の横顔と。桜と。空と。
ドキドキしながらそれをそっと覗き見た。






それが、初めて。
蒼吾くんの事を好きだって、自覚した瞬間だった。






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