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魔法のコトバ*  Season2 初恋-4-
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魔法のコトバ* Season2 初恋-4-

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蒼吾くんはよく笑う。
いつもクラスの中心にいて、よく笑って怒って。
表情がくるくる変わって、見ていて飽きない。
パワフルで、明るくて、行動的。
私にはないものをたくさん持っている男の子。
同じクラスになったことで、蒼吾くんのいろんな顔が見えてきた。

野球が好き。青が好き。ゲームが好き。
牛乳が苦手でいつも給食の時、我慢して飲んでること。
負けず嫌いで曲がった事が大嫌いな性格。
それでいて不器用。
友達がすごく多くて、休み時間はいつも彼の周りには友達が絶えない。
声が大きくて、よく通るの。
よく笑って、怒って、とにかくよく笑う。
口を大きく開けてわらったり、いたずらっぽく歯を見せてイヒヒって笑ったり。
顔をくしゅくしゅにしてはにかむように笑う顔が、私は何よりも大好きだった。








「園田、ちょっと消しゴム貸して。オレ家に忘れてきちゃってさ」


授業中、蒼吾くんがそっと私の肘を小突いた。
私はピンクの花柄の筆入れから消しゴムを取り出すと、そっと隣の机の上に置いた。
「さんきゅ」
あ。
またあの笑顔だ。
くしゅくしゅって顔いっぱいに浮かべる笑顔。
胸の奥をぎゅって掴まれるような、何ともいえない息苦しい感覚が私を襲う。
私がまだじっと見ている事に気付いた蒼吾くんが、にっと笑って自分のノートを指差した。
「?」
私が首をかしげると『コレ、見ろよ』といわんばかりの仕草でノートを渡した。
「…あ」
受け取ったノートの隅に、小さく男の子の絵が描いてある。
蒼吾くんを見ると、何やら伝えたそうな顔でこっちを見てる。
指でパラパラと教科書をめくる。
ああ、そっか。
私は蒼吾くんの言いたいことを理解すると、受け取ったノートの端をそっとめくってみた。
隅に描かれた男の子の絵がノートをめくると動き出す。
これ、パラパラ漫画だ───。
勉強が大嫌いな蒼吾くんが珍しく真剣にノートをとっているなと思ってたら、こんなものを作ってたんだ。
思わず笑ってしまう。
「それ」
あいつ、と前に立って授業をしている茂野先生を指差す。
野球部の顧問で熱血教師の担任、茂野先生。





蒼吾くんは4年生になって野球部に入った。
昔から野球が好きで、お父さんと休みの日にはキャッチボールをしてたんだって。
地元のリトルリーグと部活動。
どちらにしようか迷って。
結局、友達の多い部活動を選んではじめたのがついこの間。
茂野先生は去年のクラスマッチで、蒼吾くんの野球センスに入れ込んで。
彼をしごきまくってるって専らのうわさ。
「いい先生なんだけどさ、熱くなりすぎるから時々、ついていけないんだよな」
そう言いながらも、蒼吾くんは嬉しそうに笑った。
大好きな野球を。
大好きな学校で出来ることが、すごく嬉しいみたい。
パラパラ漫画の主人公は、熱血野球馬鹿な茂野先生。
空振りしちゃうへっぽこシーンは、先生への小さな仕返しのつもりらしい。
あまりにも子どもっぽくて笑っちゃう。






隣の席の特権は。
こうやって蒼吾くんと小さなやり取りが出来る事。
隣の席にならなかったらきっと。
『隣のクラスの蒼吾くん』っていう距離は変わらないままだった。
存在感の薄い私は、名前さえ呼んでもらえなかったかも。
クラスメイトって、隣の席ってすごい。
あまり好きじゃなかった学校が少しだけ、好きになった。
蒼吾くんに会える毎日は、キラキラ輝いて、何をしてもドキドキする。
このままずっと席替えしないといいのに。
私は毎日、そう願ってた。







でも。





「明日は、席替えをするぞ〜」
帰りの会で黒板に時間割表を書きながら、先生が言った。
「やったぁ〜!!」
って喜ぶ子や。
「え〜〜。このままでいいのに〜」
って席替えを嘆く子。
私は明らかに後者。
もちろん口に出してなんて言えないから、そのまま自分の席で固まったまま動けなくなった。
うそ。
もう席替えしちゃうの??
まだ新学期が始まって2週間だよ?
5月の連休が終わるぐらいまでは大丈夫だと思ってたのに。
あまりにも早すぎる展開に涙が零れそうになって、私は唇をぎゅっと噛締めて下を向いた。









「別に、このままの席でもいいんじゃねーの?」




クラスメイトの喜びを打ち破るように、よく通る声が教室に響いた。
声の主は蒼吾くん。
クラスがざわめいた。




「なんだ。夏木は席替えしたくないクチか?」
「だって別に不自由してないし。今の席で親睦を深めたのでもいいじゃん。授業に差し支えもないしさ」
「それ───お前が言えるセリフか? 学級委員の日下部がいうならともかく、夏木じゃなぁ。そういうセリフは毎日の宿題をちゃんとしてきてから言え」
「オレ、ちゃんと毎日宿題やってきてるじゃん」
「園田のを丸写しだろうが。それはやってるとは言えないんだよ、夏木」
「げっ。ばれてた??」
蒼吾くんのおどけた言葉に、クスクスと教室から笑い声が上がる。




蒼吾くんは毎日、宿題をやってこなくて。
毎朝、私の宿題を写しすのが日課になってた。
もちろんそれは蒼吾くんの為にはならないけれど。
写したあとに「さんきゅ」って、はにかむように笑う蒼吾くんの笑顔がとても好きだったから。
私はその朝の時間が大好きだった。
でも。
席替えしちゃったら、それも違う子の特権になっちゃう。



「わからないとでも思ってたのか? 先生を甘く見るなよ?」
先生はニヤリと笑うと、
「ま、そういうやつの為にも席替えは必要だ。望んでその席についたやつもいるけど、貧乏くじをひいたやつもいる。次は公平にするぞ」
「ちぇっ」
蒼吾くんは大きなため息をついた。
「とにかく明日は朝一で席替えだ。楽しみにしておけ」

先生はそう言って、時間割表の一番上に大きく赤字で『席替え』と書いた。












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