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魔法のコトバ*  Season2 初恋-6-
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魔法のコトバ* Season2 初恋-6-

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席替えの日の朝は珍しく遅刻ぎりぎりだった。
前の日にいろんな事がありすぎてなかなか眠れなくて。
ほんとは念入りに時間をかけてやるはずだった算数の宿題も、ただそのまま解くだけで終わってしまった。


始業10分前の予鈴が鳴るのと同時に、私は玄関に滑り込んだ。
急いで履いてきたスニーカーを脱いで上靴に履き替える。
同じようにギリギリセーフで走り込んで来た生徒達が、ばたばたと階段を駆け上がる。
チラリと靴箱に目をやると、蒼吾くんのナイキのスニーカーが見えた。
もう来てるんだ。早いな。
ちょっとホッとしたような、後ろめたいような気持ちでそれを確認すると私も急いで階段を登った。
随分と走ってきたから息が上がる。
3階まで一気に駆け上がったところで足が上がらなくなって、膝に手を付いて大きく息を整えた。
1組は廊下の一番手前、階段横の教室。
まだ先生は来てないみたい。
ホッと胸をなで下ろした。


「何だよ、それ」


聞き覚えのある声が教室から聞こえた。
声変わりが始まったばかりのちょっとハスキーな声。
蒼吾くんだ。


「園田だろ」


…え?


突然上がった自分の名前に私は、弾かれたように顔を上げる。


「お前、園田のことが好きなんだろ?」


笑い声の混じったクラスメイトの声が廊下まで聞こえてきた。
その内容に私は目を丸くする。

蒼吾くんが私を…好き?

「だから、違うって言ってるだろ?」
「でもやたらと仲いいじゃん、おまえら。授業中に仲良く外見たり、ノートの交換とかやってるしさ」
「宿題もいつも見せてもらってるじゃん」
「怪しいよな〜。ラブラブってやつ〜!?」
男子の口笛交じりのはやし立てる声が廊下にも零れる。
ラブラブ?私と蒼吾くんが??
カーッと耳の上まで血が登って顔が真っ赤になるのがはっきりと分かった。
この状況で教室に入るのなんて無理。
話題に話に参加していないクラスメイト達も興味津々で聞いているのが、教室の外まではっきり伝わって来る。


どうしよう…。


「好きとかそんなのカンケーねぇよ。
たまたま園田が隣の席だから、宿題を見せてもらってただけだろ」
「またまたぁ!照れちゃって〜」
「園田と離れたくないから、席替えしたくない発言したんだろ?
あ〜!お熱いね〜〜!!」
「何だよそれ」
蒼吾くんのムッとした声がした。
今にも飛び掛っていきそうな不機嫌な声。
あ。
やばそう。
直感的にそう感じた。
でも自分の名前が話題に上がっている中に飛び込んでいけるような勇気は、私には持ち合わせてなくて。
どうしようもなくその場に立ち尽くしてた。

「それは違うってば!」
険悪なムードを断ち切るように声が聞こえた。
甲高い女の子の声。
この声、水野さんだ…。
昨日の出来事を思い出して、ますます教室に入りづらくなって足を止めた。


「園田さんって真面目だから、宿題も文句を言わずに見せてくれるから、席替えしたくなかっただけでしょ? 都合がいいって蒼吾くん、言ってたじゃない!」
甲高い声が廊下まではっきりと聞こえる。
「そうだよね?」
念を押すように水野さんが言った。
「…俺はべつに…、園田のことなんてなんとも思ってねーよ。
ただ隣だと、いろいろと都合がいいから…」







…なんだ。
水野さん達が言ってたこと、デタラメじゃなかったんだ…。


もやもやとした気持ちが押し寄せて、胸の奥に何か引っかかってるような感じがした。
気持ちが悪い。
じんわり涙が浮んで目頭が熱くなった。

「ね、やっぱりそうじゃない。好きとかそういうんじゃないんだって!」
水野さんの嬉しそうな声が私にさらに追い討ちをかけた。
「…園田って、何か違うんだよ。普通っぽくないっていうか、髪だって目だって色が薄くて外人みたいだし、くるくるしてるし。」
「ワカメみたいな髪だもんね?」
「あーー。…そんな感じ」
蒼吾くんが曖昧な返事で頷いた。
「ワカメだって〜」
「可哀相〜。でも当ってるよね」
クスクスとクラスから笑い声が上がる。
足が棒のように動かない。


蒼吾くんが、そんな風に思ってたなんて。
あの時。
去年校舎裏で、フワフワしてて可愛いって言ってくれたのは嘘だったの?
かくまってもらったお礼だった?
そもそも蒼吾くんはあの日の事なんて、これっぽっちも覚えてないんだ。
きっと…。
私は悲しいのか悔しいのか分からない、もやもやした気持ちを押し込めるように、唇をぎゅっと噛み締めた。



「それにさ、園田って色が白くてほっぺたとかぽっちゃりしてて、マシュマロみたいだし。
あ、ちょうど昨日テレビでやってたマシュマロお化けみたいな…」
「お…おい、蒼吾。」
「何だよ」


「あれ…」


クラスメイトのひとりが私の存在に気付いてこっちを指差した。
クラス全員が。
蒼吾くんが、こっちを振り返る。



「……園田…」


蒼吾くんの表情が、凍りついたように強張った。
教室の中が、シン…と静まりかえる。
まさか本人が聞いてるなんて思わなかった。
そんな表情で私の出方を待ってる。




「おーい、席に着け〜〜」
本鈴が鳴ったのと同時に、出席簿を持った先生が教室に入ってきた。
クラスメイト達は後ろ髪を引かれながらも、先生の言葉で蜘蛛の子を散らすように自分達の席に帰っていく。
私と蒼吾くんは固まったようにその場から動けない。
「おい、どした? 園田? 入らんのか?」
先生が教壇から不思議そうに声を掛けた。
「夏木も立ったままで。何かあったのか?」
「…いや、何でもないです」
「そうか? それなら早く席につけ。園田もだ。
それともお前ら、何か? そんなに席が離れるのがいやか?」
状況の見えない先生は冗談混じりにニヤリと笑った。

先生、それ今は禁句だよ。

クラスメイトみんながそう思ったと思う。
私は黙って下を向いた。


「とにかく、早く席に着け。1時間目が始まる前にやってしまうぞ、席替え」


その場から走って逃げ出したくなる気持ちをグッと我慢して、私はよろよろと教室に入った。
痛いぐらいの視線が私と蒼吾くんに向けられる。
顔を上げなくてもそれはひしひしと伝わった。
もう帰りたい。
ここから逃げ出したい。
泣きそうになるのをグッと我慢して、私は席についた。


「…園田、」

蒼吾くんがそっと、声を掛けた。
困った表情にちくりと胸が痛む。

もういいよ、蒼吾くん。
あんな事を言われたあとで話すことなんてないよ。
何事もなかったかのように話すなんて、弱虫な私には無理。
今は何を聞いても言い訳にしか聞こえないから。
それならいっそう、ずっと話さないままの方がいい。


私はずっと下を向いてた。
少しでも顔を上げると泣いちゃいそうだったから…。





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