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魔法のコトバ*  Season3 キス-5-
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魔法のコトバ* Season3 キス-5-

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頭の中が真っ白になって。
どうしようもないくらいお腹も痛くて。
私は何も考えられなくなって、その場にうずくまった。
男子はおもしろおかしくはやし立てるし、女の子達はすごく冷たい視線で私を見てる。
何で?
私はなにひとつ悪いことなんてしていないのに。


私がうじうじしてるから?
自分の意見も言えないから?
だからみんなおもしろがってる。
自分が変わらなきゃ、何も変わらない。
ちゃんとわかっているつもりなんだけど、そんな勇気はなくて。
4年生が終わるまで、ずっとこのままなのかな?
そう思ったらお腹の痛みが急激に増して、頭の中はますます真っ白になって。
気が遠のく感覚が私を襲った。





「ねぇ。
いい加減にしたら?」





突然。
クラスの雰囲気を壊すかのように、クラスメイトのひとりが口を開いた。
大騒ぎしていたクラスメイト達が。
シン。
って、静かになって。
じわり…と、声のした方を振り返った。
私も。
遠のきかけた意識が、一瞬、その言葉に引き戻された。


「もう、そういうのやめたら?
あんた達、男のくせにかっこ悪すぎ。他にやることないの?」


ちゃんと聞こえた。
聞き間違えとか、錯覚とかじゃなくて。
張りのある凛とした声がはっきりと耳に届いた。
この声は聞き覚えがある。
クラスメイトの顔も名前も、何となくしか覚えていない私でも知ってる。
毎日、授業の号令で聞いてる声。
私はおなかに手を当てながら、涙でくしゃくしゃになったひどい顔を上げた。



────あ。


やっぱりそうだ。




日下部 凪(クサカベ ナギ)ちゃん。
うちのクラスの学級委員長。
真っ黒でサラサラで腰まである長い髪を翻して、私の前に立つその姿は勇ましくて。
私は驚いた顔で彼女を見上げた。


どうして日下部さんが?
私を、庇ってくれてるの?


溢れていた涙が一瞬止まった気がした。
それぐらいびっくりした。


「ひとりの女の子によってたかって何?女の子の純情を傷つけるような事して、恥ずかしくないの?」
日下部さんは怒ったように、ぐっと安部くんに顔を近づけた。
「キスしたからって何?
だいたい気持ちのこもってないキスなんてカウントに入らないでしょ?」
きれいな顔があまりにも近付いたから、安部くんはすごく真っ赤になった。
動揺しまくり。
わかりやすいよ。

「な、…何だよっ、日下部…」
勢いに負けて、安部くんの体が一歩後ずさった。
「おまえ…偉そうに言ってるけどな…っ、キスの経験もないくせに、偉そうな事いうなよ!」
言葉がしどろもどろ。
いつも私に嫌なことばかり言ってた勢いがない。
こんな安部くん、初めて見た。



「経験?」



日下部さんは片眉を上げた。
そしてしばらく間を置くと安部くんを見下すような表情で。
「あるわよ」
短くそう告げた。




「……え?」


教室の中がざわめいた。
「…んだよ、嘘言ってんなよ?
キスってゆってもな、母親とか家族とかとするヤツの事言ってるんじゃないんだぜ…?」
安部くんは動揺して、完全に日下部さんの勢いに押されてる。
言葉に勢いがない。
予想外の返事に戸惑いの色が隠せない。


「あたりまえじゃない。
キ・ス、したことあるからゆってるんでしょ!」

はっきりとした口調できっぱりと言いきった。
凛とした真っ直ぐな目で安部くんを見つめて。
嘘なんか言ってない。
そういう真っ直ぐな目だった。
シン。
って、教室中が静まり返った。


男子は呆然。
だってその頃、クラスの半分以上の男子は日下部さんに憧れてたから。
クラスのマドンナが、憧れの日下部さんがキスの経験ありだなんて。
かなりの衝撃。
安部くんもそのクチ。
余裕ぶっていた顔つきが急変したのがあきらかにわかった。


「そっちこそ、したことないのに偉そうなこと言わないで」
日下部さんは冷たく言い放つと、
「大丈夫?園田さん」
床に座り込んでいる私に声を掛けた。
心配して気遣ってくれる優しい声。
「園田さん?」
背中にそっと触れる。
優しく撫でてくれる手の温かさが、背中からじんわりと伝わってきた。
こういのはパパやママ以外では久しぶり。
心の中から温かくなるような、目の奥がじんって熱くなるような安心感。
こんな人もクラスにいたんだ。
ホッとしたら。
スッと気が抜けて。





「…?園田さん…?……園田さん────っ!!!」









日下部さんの声が遥か遠くに聞こえた。



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