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魔法のコトバ*  Season3 キス-4-
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魔法のコトバ* Season3 キス-4-

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その日の昼休みは少し天気が悪くて。
今にも降り出しそうな空模様に、いつもなら外に出てドッジボールやサッカーをしている男子がほとんど教室に残ってた。
私はその頃読書にはまっていて、たいていの休み時間は図書室で借りてきた本を読んでることが多かった。
その日も借りてきた本を自分の席で読んでいて。
手をつないだ男の子と女の子のほんわかした表紙の物語で。
別に恋だの、愛だの。
そんな事は無縁の話。



なのに。



「何読んでんだよ、園田〜」
突然、おどけたような口調でクラスメイトのひとりが、私を覗き込んできた。
いつも私をからかってくる集団のリーダー格の男子。
たしか安部くん。
やけにニヤニヤして意味深な笑みを顔いっぱいに浮かべてた。


何?


彼がこんな顔をする時は、大抵、何かを企んでいる時。
何かをしてやった後の光景を思い浮かべて、想像笑いみたいな感じ。
ニヤニヤしてて気持ちが悪い。
しかもこの日は今までに見たことのないような企み笑い。
私はとっさに身構えた。


「お前、いつも休み時間になると本を読んでるよな?友達いねぇの?」
人を見下したような口調で淡々と言った。
ていうか、完全に私を見下してる。
そういう状況に追い込んだのは安部くん達なのに。
ちょっとムッとしたけど、そんな事を言ったら後で何を言われるかわからないのから、言いたい言葉をグッと飲み込んで我慢した。
「くるくるワカメのくせに無視すんなよ」
安部くんは私の反応に少しムッとしたように口調を強めた。
「何読んでるんだよ」
「あ…っ」
返事も待たずに手から本を抜き取る。
「なになに〜…」
奪い取った本を乱暴に開いて、チラリと私を見た。

「“花子はクラスのいじめられっ子で友達がいません。休み時間になるといつもひとりで本を読んでいます。だって友達がいないんだもん”」
本の内容なんかちっとも読んでないくせに、自分で作った話しを声に出して読み上げる。
そんな様子をおもしろがって、クラスメイト達が横目でこっちを見ながらクスクス笑う。
「返して!」
私は泣きそうな声で、真っ赤になって言うけど。
安部くんはちっとも聞いてくれない。
その作り話はどんどんエスカレートして。
ボリュームも最大。
わざとクラス中に聞こえる大きな声で読み上げた。
「“花子は太郎の事が好きで、いつもキスをしてみたいって思っていました”」
しかも、とんでもない内容。

何それ?
何で急にそんな話題なの?
それって安部くんの願望じゃないの??

私の疑問はよそに、
「お前、こんなの読んでんの?やらしいなぁ」
ニヤニヤして私を見下ろした。
そしてしまいには、
「お前って、キスしたことあんの?」
なんて聞いてきた。
すごく厭らしいニヤニヤした顔つきで。



は?



何言ってるの?



キスって、あのキス?
パパやママと小さい頃にしていたハグじゃなくて。
好きな人とするキスの事??


質問の意味を理解して。
ちょっと頭の中で想像とかしちゃったりとかして。
カーーって、頭に血が上って顔が真っ赤になるのがわかった。



「あ、こいつ赤くなってるじゃん!経験ありか〜?」
安部くんは私の反応をおもしろおかしく騒ぎ立てる。
そんなのあるわけないじゃん。
特別仲のいい友達だっていない私だよ。
彼氏はおろか、男友達でさえいないのに。
そんな事はわかってるはずなのに。
っていうか、わかっててからかってるんだ。

そう思ったら、さすがの私もカチンときて、
「返してってば…!!」
珍しく安部くんに食いかかって行った。
大好きな本を取り上げられて、その上あることないこと言われたんじゃたまったもんじゃない。
想像してなかった私の勢いにびっくりして、安部くんは持っていた本を手から離した。
パサリと音をたてて、本が床に落ちる。
私は安部くんよりも先に拾おうと、慌てて腰を落とした。
同時に安部くんがかがんで手を伸ばす。

でもその手は落っこちた本に、じゃなくて。
明らかに私の手を掴もうと伸ばした手。




何?…私…?




本を掴むよりも先に安部くんが私の手を掴んだ。




「バカだろ?お前」



小さく安部くんが呟いて、にやっと笑ったのが見えた。
最上級の企み笑い。
すごく間近で見えた。
息がかかるかかからないかの距離。
背筋がぞっとした。
私は身の危険を感じて反射的に目を瞑る。




その瞬間。


ぐんって。
誰かに反対側の腕をつかまれて。
強くそちら側に引かれた。


それと同時に。
柔らかいものが唇に触れて、
カチンって。
歯の当たる音がした。






私は一瞬。
自分に何が起きたか分からなくて。






「キャァァーーーーっ!!」
って。

クラスの女の子の悲鳴に近い声が上がって。
びっくりして尻餅をついたら、目の前によく知った顔があった。
その顔は真剣な表情で私をじっと見据えると、しばらくしてバツが悪そうに下を向いた。








何…?




今の、何?










「嫌ぁーーーっ!!」
「何で!?何で蒼吾くんが…っ!?
やだぁーーーーーっ!!」
女の子達の悲鳴が上がる。






蒼吾くん?

何で蒼吾くんが目の前にいるの?




ていうか、今の、
なに??





目の前が真っ白になった。





「何やってるんだよ、蒼吾っ!!」
オレがやるってゆってたろ?
最後の声は聞こえるか聞こえないかの小声で、安部くんが囁いた。

やるって何を?

「何で蒼吾くんが、園田さんにキスするのっ!?」
甲高い水野さんの声。



─── キス ───?



私は今頃になって、ようやく状況を理解して、真っ赤になって口元を覆った。
まるで証拠を隠すかのように。
そんなの無意味だってわかっていても、そうせずにはいられなかった。


嘘。


なんで。
なんでキスしたの?


教室はもう大騒ぎで。
泣いたらだめだとか、声を押し殺して泣かなくちゃとか。
もうそういうのを考えられる余裕はなくて。
ポロポロと涙が溢れて止まらない。


そんな事はお構いなしに、
「蒼吾が園田にキスして泣かせた〜!!」
とか、
「園田、初ちゅー!!」とか。
安部くん達が騒ぎ出した。

女の子は女の子達で。
狙っていた蒼吾くんの生のキスシーンを目撃したおかげで、すっかり放心状態。
そしてじわじわと怒りが表に表れてくる。
もちろんその怒りは加害者の蒼吾くんや安部くん達に、じゃなくて。
キスされた被害者の私に。



私はそんな事なんて気にならないぐらい。
恥ずかしさと、悔しさと、悲しさと。いろいろな感情が入り混じった複雑な心境で。
もう何がなんだかわからなくて。
とんでもないくらいひどい顔で。
しゃくりあげるように涙が止まらなかった。




いつものお腹の痛みも襲ってきて。
今までにないような急激な痛みに、頭が真っ白になった。




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