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魔法のコトバ*  Season3 キス-6-
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魔法のコトバ* Season3 キス-6-

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いつもの見慣れた白い天井が目に入って。
「……目が覚めたかしら? 大丈夫?」
心配そうに私を覗き込む保健の先生の顔が見えた。
私はどうも意識を失ったらしい。
今までお腹が痛くて保健室のお世話になったことはあるけど、倒れてるなんて初めて。
それって大丈夫なのかな、私。


「園田さんの腹痛は精神的なものだから、体には異常はないんだけど……」
先生はちょっと言いにくそうに言葉を濁すと。
「…何かあった?」
優しい口調で私を覗き込んだ。
「倒れるほどの腹痛なんて、よほどのことだものね?」
優しい手がそっと背中を撫でてくれる。

「………」


私は黙り込んでしまった。
「そっか…。言いたくないなら無理に聞かないわ。少し休んだら送って行くわね?」
気持ちを察してくれたのか先生はそれ以上は聞かずに、優しく笑って私の頭をそっと撫でてくれた。
その手が暖かくてじわりと涙が浮んだ。
「先生、車の鍵を取ってくるから。それまで休んでいてね?」
そう告げると、先生は保健室から出て行った。




「…園田さん?」

しばらくして、カーテンの外から遠慮がちに呼ぶ声がした。
先生じゃなくて生徒の声。
「大丈夫…?」
そっとカーテンが空いて、見慣れない顔がカーテンの向こうから顔を出した。
さっき私を庇ってくれたクラスメイトの女の子。
学級委員の日下部 凪ちゃん。
正義感が強くてしっかり者で。
だから私のことも助けてくれたのかな。
私とは正反対の真っ直ぐで黒い髪が揺れた。
いいな。
思わず触りたくなっちゃうサラサラの髪。
凛とした表情は小学生なのにずいぶんと大人びていて。
勉強ができてスポーツ万能で、ほんと完璧な女の子。

あの蒼吾くんのことを。
ゆいいつ『蒼吾』って呼び捨てで呼ぶ女の子。
彼を好きだった頃は、その距離の近さがうらやましいな、って本気で思ってた。
蒼吾くんとは家が近所で、昔からの幼なじみなんだって。
小さい頃から、こんなにキレイで何でもできる日下部さんを見てきたんだもん。
あんなふうに言われちゃうのはしょうがないのかな。
私も。
日下部さんみたいに完璧な女の子だったら、水野さんたちに文句を言われることもなかったのかもしれない。
男子はもちろんだけど。
日下部さんは女の子からも一目置かれている憧れの存在で、私も憧れてた。
日下部さんみたいになれたらいいな、って。
ずっと……。



「……もう、大丈夫なの?」
「うん。平気。……ありがとう…」

自分があの日下部さんと話してるなんて変な感じ。
これって夢じゃないんだよね? なんて。
ちょっと思っちゃう。
日下部さんは私とあまりにも違いすぎて、いろんなことが正反対で。
こんな風に話すことなんてないだろうなって、ずっと思っていたから。

「そっか、よかった。急に倒れるからびっくりしちゃった。
あいつらにはよーく言っておいたから」
「…え?」
「安部。明日、謝ってくると思うよ」


安部くんが?
まさか…。


私が信じられないっていう表情で日下部さんを見上げたものだから。
「大丈夫よ!ちゃんと先生にも話しておいた。告げ口ってやつ?」
そう言って日下部さんは笑った。
彼女が大丈夫っていうなら、何だかそんな気がしてきた。
だから、ちょっと聞いてみたくなった。

「…何で…私を庇ってくれたの?」
って。

日下部さんはちょっと不思議そうな顔をすると。
「だって当たり前じゃない。大事なクラスメイトだよ?」
そう言って真っ直ぐな目で私を見た。
その場だけの取り繕いとか、建て前とかじゃなくて。
本気で言ってる。
凛とした目でじっと私を見つめるから、こっちの方が恥ずかしくなって思わず下を向いた。
こんなに間近でじっと見つめられたのって初めてかも。
日下部さんの真っ直ぐな眼差しって、ちょっと蒼吾くんに似てる…。


「ああいうの好きじゃないの。大勢で寄ってたかってみたいなの」
日下部さんはちょっと拗ねたような怒った顔つきで言った。
正義感強そうだもんね。
でも、それってすごいことだよ。
そう思っててもそういう事は、なかなか行動には移せないことで。
もしかしたら他にもそんな風に思ってくれている子がいたかもしれないけど。
みんな自分が巻き込まれることを恐れて、遠巻きで見てた。
かかわりたくないって。
巻き込まれたくない、って。
私だって。
もしクラスメイトが同じ目に合ってたとしても、止めに入ることなんて出来なかったと思う。
行動にできるか出来ないかは、その人の勇気次第。



「それに……」
「それに?」
日下部さんはちょっと考えて。
「…ううん。何でもない」
首を横に振った。

「ごめんね。こんな事になるなら、もっと早くに止めに入ればよかったね。
園田さんがもう少し自分で何とかするかと思ってたから我慢してみてたけど、もう限界。あまりにも頭にきて言っちゃった。
…お節介…だった?」
私は大きく首を横に振った。

そんな事ない。
嬉しくてたまらなかったよ。

「そ、よかった」
心底安心したように日下部さんは笑った。
同じ女の子なのにドキドキしてしまう。

「…もう帰れるの?」
「うん…。先生が車で乗せて帰ってくれるみたい。」
「そっか。残念」
「…?」
「一緒に帰ろうかなって思ってたから」
「……え?」
「でも倒れた後だから、今日は先生に送ってもらった方が安心だよ。今度は一緒に帰ろうね?」
そう言って日下部さんは笑った。

「…私と一緒にいたら…何か言われちゃうよ?」

だってそうだもん。
日下部さんの気持ちは涙が出るほど嬉しかった。
だけど、だからこそ巻き込みたくないなって本気で思った。
でも。

「平気だよ。だって二人の方が心強いでしょ?」

にっこり笑ってそう言った。

日下部さんがそう言うと、ほんとうに大丈夫なような気がするから不思議。
庇ってくれたからとかじゃなくて。
言ってる事は嘘じゃないんだって、心から信用できるようなそんな笑顔。
目、かな?
意志の強い真っ直ぐな目。



「でも…」

「私と一緒にいるの、いや?」

「そんなこと…っ」

慌てて首を横に振った。
そんなことあるわけないよ。

「じゃあ友達になろ?」

「…私、と?」

「うん。園田さんと。ほんとはね、ずっと友達になりたかったんだ」

少し照れたように笑う。
こういう笑い方はちゃんと同じぐらいの年頃の女の子の笑顔みたいで可愛いな、って思った。
日下部さんの言葉に、思わず耳を疑ってしまったけど。

「…ましろって、呼んでもいいかな?」
そう言って笑ってくれたから。
「うん」
私も思わず笑って頷いた。
嬉しさとか、心強さとか、今まで寂しかった気持ちとか。
いろんな気持ちが入り混じって。
泣いてるのか笑っているのか分からないような引きつった笑顔だったと思う。
でもそんな私の笑った顔を。
「ましろはそうやって笑っている方が素敵だよ?」
そう言って褒めてくれた日下部さん。
嬉しそうににっこり笑ってくれた。

私なんかよりもよっぽど素敵な笑顔だよ。
私は嬉しくてどうしようもない気持ちをしっかり心にしまいながら。
もう一度笑ってみせた。




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