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魔法のコトバ*  Season4 放課後-4-
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魔法のコトバ* Season4 放課後-4-

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「…佐倉くん…だよね?」
私は恐る恐る彼の名前を呟いた。
確かに見覚えのある顔は彼なんだけど、いまいち記憶が曖昧すぎて。
だってあれから4年。
私の記憶の中の佐倉くんは、5年生のまま、止ったっきり。
眼鏡だって、かけてるし…。
昔はかけていなかったよね?


「こっちに戻ってきてたんだ、ましろちゃん」

そう言って眼鏡を外した佐倉くんが、嬉しそうに笑った。







───あ……。


間違いない。
あの笑い方。
ちょっと目じりの下がった、にこって感じの優しい笑い方。
ほんとうに佐倉くんだ。
私は確信した。




佐倉 隼人(サクラ ハヤト)くんは、小学校時代のクラスメイト。
4年生の夏に転入してきて。
私が渡米するまで、ずっとクラスメイトだった。
出席番号が近くて、隣の席になったり、学習班が一緒だったりで。
彼とは何かと縁があった。

シュガーフェイスで、柔らかく笑う可愛い男の子。
人当たりが良くて、誰にでも同じように優しくできるから。
転入してきてから、あっという間にクラスの人気者になった。
佐倉くんが来たことで、あの当時人気者だった蒼吾くんが、霞んでしまうぐらい。



ちょうどあの頃の私は。
キス事件以来、男の子なんて──────って、苦手意識が強くて。
クラスの男子とは、ほとんど話すことがなかった。
そんな私が唯一、普通に話せたのが佐倉くん。
彼の人当たりのいいところとか、柔らかい雰囲気とか。
私のことを面白半分にからかってくる男子とは全然違って、訳隔てなく接してくれる佐倉くんは、すごく話しやすかった。
転校してからはもちろん、交流なんてなかったけれど。
仲のいいクラスメイトだったと思う。




「ましろちゃんとはもう、4年ぶりぐらいになるのかな?」
バケツを片付け終えた佐倉くんは、窓際の席に戻って描きかけのスケッチブックを手に取った。
「佐倉くんも同じ高校だったんだね」
「そ。蒼吾や日下部とは腐れ縁ってやつ。Cクラスってことは…もう、ふたりには会ってるだろ?」
「うん…」
「俺はAだよ。いつでも遊びに来て」
佐倉くんが笑う。

「絵、描いてたの?」
「ああ」
「こんな狭いところで?」
佐倉くんは、美術室でキャンバスに向かうでもなく、狭い準備室の窓際に腰かけてデッサンをしていた。
「狭いところの方が落ち着くんだ。俺……貧乏性かな?」
肩をすくめて笑う。
目尻が下がって可愛いの。
佐倉くんが笑ったら、自然とつられて笑顔になる。
柔らかく優しいオーラを持った人。
相変わらずもてるんだろうなって、笑顔を見ながら確信してしまう。



「ここに来たってことは、入部希望だろ?」
「とりあえず見学だけなんだけど……たぶん、美術部にすると思う」
ここ以外、私に向いているものが見つからない。
「ね。今日は、活動日じゃなかったの?」
もう夕刻なのに、私以外が美術室の扉を開けることはなかった。
「顧問の先生の都合でね、2学期から活動日が月曜に変わってさ。自由参加の今日は俺だけ……? みたいな」
肩をすくめて佐倉くんが苦笑した。
「たぶん今週はこんなもんだと思うよ。みんなやる気ないからね。部員がそろうのは、来週になるかな?」
「…そうなんだ」
じゃあ来週まで入部を待ってみようかな。
どんな人がいるのか気になるし。
私ってとことん臆病者。
石橋を叩いてなおかつ落とし穴がないか、崩れそうなところはないか、確認してから慎重に渡るタイプ。
なのに見落としてはまって動けなくなっちゃうの。
まいっちゃう。




「美術部、おいでよ?」
佐倉くんが笑った。
柔らかい笑顔が私の心を包む。




「歓迎するよ? 俺もましろちゃんが来てくれると、嬉しいし」



社交辞令だってわかっていても、そんな風に言われると素直に嬉しい。
知ってる人がいるのは、臆病な私にとって、とても心強い。
「ね。どうかな?」
返事をするのにそう時間はかからなかった。


「…佐倉くんがいるなら……入ろっかな」
「本当? ましろちゃんが一緒だと、嬉しいな、俺」
「わ…っ」
ぎゅって、佐倉くんに手を握られた。
そういう人とのスキンシップに慣れてない私は、びっくりしてそれを振り払ってしまう。

「あ。ゴメン。嬉しくってさ、つい……」
「ううん。私の方こそ。嫌とかそういうのじゃなくて…ただ、びっくりしただけだから……」
お互い顔を見合わせて、どちらともなく笑う。





「おかえり、ましろちゃん。俺、ましろちゃんが帰ってきてくれて、すごく嬉しいよ」


心底喜んでくれているような表情で、佐倉くんが笑ってくれた。
その言葉に特別な意味なんて微塵もないんだろうけど。
私はすごく嬉しくて、胸の中がほっこり、温かくなった。






明日から放課後が、楽しくなりそう。





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