RS Novels 2021-01-15T00:37:31+09:00 http://miimama.jugem.jp/
JUGEM TOP http://miimama.jugem.jp/?eid=34 2012-10-19T13:21:00+09:00 2013-10-21T01:58:36Z 2012-10-19T04:21:00Z RS NOVELSへようこそ!
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... りくそらた 目次 RS NOVELSへようこそ!
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illustration BY / はづきゆみ
* What's New *
9/18 モバスペブックにて『とわの彼方に』配信中のお知らせ
5/28 魔法のコトバ* ギャラリーにイラストを2点追加
5/28 とわの彼方に ギャラリーにイラストを1点追加
* 作品リスト *
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■シリーズモノ
魔法のコトバ 完結
春を待つキミに。 連載休止中
■魔法のコトバ*スピンオフ作品
青春ライン 連載休止中
■大人テイストの単作
とわの彼方に 完結
■ラブファンタジー小説
LOVE PHANTOM 不定期連載中
■裏ブログ(R18作品)
幸せのカタチ。 不定期連載中
R指定作品を取り扱っている為、パスワード制になります。18歳未満の方はご遠慮ください。
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]]> 魔法のコトバ*目次 http://miimama.jugem.jp/?eid=296 2012-10-18T09:25:00+09:00 2012-10-19T04:42:10Z 2012-10-18T00:25:00Z ○○ 魔法のコトバ* ○○
雪の白。空の蒼。春の桜。
私が描くキャンバスの色はいつも恋の色だった。
同級生男女4人。
ちょっぴり切ない初恋のおはなし。
*魔法のコトバ*登場人物紹介*
*魔法のコトバ*ギャラリー*
Season1 再会
*1 *2 *3 *4 *5 *6... りくそらた 目次
雪の白。空の蒼。春の桜。
私が描くキャンバスの色はいつも恋の色だった。
同級生男女4人。
ちょっぴり切ない初恋のおはなし。
*魔法のコトバ*登場人物紹介*
*魔法のコトバ*ギャラリー*
Season1 再会
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7
Season2 初恋
*1 *2 *3 *4 *5 *6
Season3 キス
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
Season4 放課後
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10
Season5 スキなひと
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10 *11 *12 *13 *14
Season6 気付いた想い
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10 *11 *12 *13 *14
*15 *16 *17 *18
Season7 キミに届け
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9
Season8 初恋〜サイド凪
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10 *11 *12 *13 *14
*15
Season9 初恋〜サイド蒼吾
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10 *11 *12 *13 *14
*15 *16 *17
Season10 気持ちが動く瞬間
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10 *11 *12 *13 *14
*15 *16 *17 *18 *19
Last Season 魔法のコトバ
*1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 *8
*9 *10 *11 *12
**魔法のコトバ*キャラクター投票。
投票結果はコチラ 。
○○ ここでキスして ○○
魔法のコトバ*番外編。ましろと蒼吾の非日常的出来事。
前編 / 中編 / 後編
○○ 全力少年 ○○
青春、全力で駆け抜けろ!
魔法のコトバ*続編。
ましろと蒼吾のナツコイ物語。
*一部、R15程度の描写があります。苦手な方は御注意を。
01* 事の起こりはこうだった
02* この恋、根気勝負
03* トラブルメーカー
04* 嵐、到来
05* オレの彼女
06* 必然な再会
07* 接触
08* 言わないで
09* 強がりの向こうがわ
10* イシンデンシン
11* フェイク
12* リアル
13* 意地とプライド、本音のココロ
14* らしく
15* ふたり模様
16* ふたり模様2
17* ふたり模様3
18* 夏のはじまり
19* 天国と地獄と。
20* 安部くんの事情
21* 素直じゃない、嘘
22* 渇望
23* 渇望2
24* 渇望3
25* 男のケジメ
26* ウラハラ1
27* ウラハラ2
28* 全力少年
29* スキというキスを。
30* スキというキスを。2
31* サンクチュアリ
32* 約束
33* サウダージ
34* 明日もきっと晴れ
○○ バースディ・バースディ ○○
ふたりの夏休み。交わした約束。
「誕生日に園田のこと、オレにちょうだい───」
蒼吾の甘い甘い誕生日のお話。
1 2 3 4 5
*一部、R-18程度の描写があります(PASSページにて)。ご注意を。
*PASSページ閲覧&PASSについて、詳しくはコチラ をごらんください。
○○ 番外編・短編集 ○○
9月の憂鬱 前編 / 中編 / 後編
君フェチ(9月の憂鬱の続きになります) 1 2
○○ Love Letter ○○
1 2 3
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]]>モバスペブック http://miimama.jugem.jp/?eid=467 2012-09-18T15:34:00+09:00 2012-09-18T06:39:02Z 2012-09-18T06:34:00Z
本当に本当に、お久しぶりです。
りくそらたでございます。
あっという間に夏も終わり、まだまだ日中の暑さは残るものの、空や風景たちはすっかり秋の気配ですね。
現在、サイト(ブログ)の方は休止中ですが。
モバスペブックさんにて、『とわの彼方に』を移... りくそらた 更新とお知らせ
本当に本当に、お久しぶりです。
りくそらたでございます。
あっという間に夏も終わり、まだまだ日中の暑さは残るものの、空や風景たちはすっかり秋の気配ですね。
現在、サイト(ブログ)の方は休止中ですが。
モバスペブック さんにて、『とわの彼方に』を移行配信中です。
内容そのものは変わっていませんが、携帯小説用に改稿しています。
この機会に読み返してやるか、携帯小説とはどんなものぞやと思われる方は、ぜひ読んでいただけると嬉しく思います。
現在、悲しみの出口13辺りまで配信中です。
私生活が忙しく、なかなかPCの前に座って作業をする時間が取れない生活が続いています。
携帯なら、と思い練習も兼ねての投稿ですが……あの携帯小説ならではの、間合いというか、行間の取り方とか難しいなぁと日々勉強です。
慣れた頃に携帯小説版で短いのをひとつ、書き下ろせたらいいな。
まあ、興味がある方は覗いてみてくださいね!
以上。
りくそらたの近況を兼ねた報告でした。
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]]> スタートライン http://miimama.jugem.jp/?eid=464 2012-05-03T08:55:00+09:00 2012-05-03T01:19:11Z 2012-05-02T23:55:00Z
おはようございます。
そしてご無沙汰していました、管理人のりくそらたです。
スランプだったことも含め私生活でいろいろありまして、執筆をしばらくお休みしていましたが、ようやく再開のめどが立ちました。
お休みしている間に下の子も幼稚園へ上がり、少し自... りくそらた 更新とお知らせ
おはようございます。
そしてご無沙汰していました、管理人のりくそらたです。
スランプだったことも含め私生活でいろいろありまして、執筆をしばらくお休みしていましたが、ようやく再開のめどが立ちました。
お休みしている間に下の子も幼稚園へ上がり、少し自分時間に余裕が持てるようになったしね。
GW中は家族サービス期間と決めているので、連休が明けてからぼちぼち活動を再開できたらいいなと考えています。
なんせ遅筆なもので再開といっても相変わらずの亀更新ではありますが、またお付き合い願えたら嬉しく思います。
相方はづきにも新しいイラストを催促しているので、どどーんと一新して再スタートできたらいいな。
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]]> イラストでお題『後ろから抱きしめて耳元で囁く』 サイド*Towa http://miimama.jugem.jp/?eid=462 2011-12-30T14:03:26+09:00 2011-12-30T13:12:40Z 2011-12-30T05:03:26Z 本日。とわの彼方に*番外編〜イラストでお題『後ろから抱きしめて耳元で囁く』 サイド*Towaを更新しました。続き、書くつもりはなかったんですけどねぇ(苦笑)なりゆきでそうなっちゃいました。あの続きということなのでモチロンR18になるため、裏に格納させていただ... りくそらた 更新とお知らせ 本日。 とわの彼方に*番外編〜イラストでお題『後ろから抱きしめて耳元で囁く』 サイド*Towa を更新しました。 続き、書くつもりはなかったんですけどねぇ(苦笑) なりゆきでそうなっちゃいました。 あの続きということなのでモチロンR18になるため、裏に格納させていただきました。 ご了承ください。 (*裏ページへのパスワードはコチラ 。) ということで。 今年はこれにて終了となります。 来年もRS Novelsをよろしくお願いいたします! ではでは。よいお年をー! お気に召したらぽちっとヨロシク。更新ペースが上がるかも…(笑)にほんブログ村 ]]>とわの彼方に*目次 http://miimama.jugem.jp/?eid=330 2011-11-30T13:11:00+09:00 2012-01-12T01:03:51Z 2011-11-30T04:11:00Z
私、花井とわ。22歳。
高校から付き合ってるカレシがいて。
恋も仕事も充実してて。
私の人生、順風満帆だ…って思ってた。
今日、この時までは───。
●CAST(別窓)
●とわの彼方に*ギャラリー(別窓)
* 本編 * 完結
プロローグ 見栄より意... りくそらた 目次
私、花井とわ。22歳。
高校から付き合ってるカレシがいて。
恋も仕事も充実してて。
私の人生、順風満帆だ…って思ってた。
今日、この時までは───。
●CAST (別窓)
●とわの彼方に*ギャラリー (別窓)
* 本編 * 完結
プロローグ 見栄より意地よりプライドよりも
01〜もう笑うしかない 1
02〜恋は突然やってくる? 1 2 3 4 5 6
03〜シアワセの輪郭 1
04〜はじまりはいつも、雨 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
05〜悲しみの出口 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
06〜嘘も愛も真実 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
6.5〜嘘も愛も真実 追記
(6章を読み終えてからお読みください。R指定作品のため、裏ブログに飛びます)
瞬間センチメンタル
love is a secret (中田鈴視点)
重ねた唇の向こう側
You are my sanctuary 1 2
07〜言葉にできない 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
エピローグ とわの彼方に
*完結後 番外編* 完結
しあわせは、キミのとなり 1 2 3 4 5 6 7
プライベート・サマー R-18
イラストでお題『後ろから抱きしめて耳元で囁く』 R-18 サイド*Tomohiro / サイド*Towa
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]]>恋愛コンプレックス 3 http://miimama.jugem.jp/?eid=456 2011-11-21T15:39:00+09:00 2011-11-21T06:43:30Z 2011-11-21T06:39:00Z
「あーあ。かわいそうに」
降ってきた声を見上げると、海から上がってきた朝子が、濡れた髪をタオルで拭きながらあたしを見下ろしていた。
「……なによ、かわいそうって」
髪を滴ったしずくが、焼けた砂地に落ちる。
「もうちょっと優しくしてやればいいのに」
... りくそらた 恋愛コンプレックス
「あーあ。かわいそうに」
降ってきた声を見上げると、海から上がってきた朝子が、濡れた髪をタオルで拭きながらあたしを見下ろしていた。
「……なによ、かわいそうって」
髪を滴ったしずくが、焼けた砂地に落ちる。
「もうちょっと優しくしてやればいいのに」
お節介な物言いにむっとしたあたしは、睨みつけるように朝子を見上げた。
「……朝子。わざと金子よこしたでしょ」
仲間内で集まっても、ふたりきりになる機会なんてほとんどない。
べつに避けてるわけじゃなく、金子は島や大野とバカばっかやってるし、あたしも朝子やとわといるからだ。
あたしがひとりなのをいいことに、金子にはっぱかけたに違いない。
「そんなに悪くないと思うんだけどなぁ、金子」
「だったら朝子が付き合えばいいでしょ」
「あー…。ナイナイ。ムリ」
ほれみろ。
自分でもありえない男をなんでわざわざ人に押し付けるかなぁ。
あたしはむくれて顎を抱えた膝の上に乗せた。
「勘違いしないでよ。ないっていうのは、受け付けないっていう意味じゃなくて、金子にその気がないからでしょ。だって金子が好きなのは鈴じゃん。アンタも薄々気づいてるでしょ」
気づいてるもなにも。
「……知ってるわよ。告られたこと、あるから」
とはいっても、もう7年も前の話だ。
金子のことは友達として好きだけど男としては見れないって、はっきり断った。
あたしが友達でいることを望んだから、今もずっと友達でいてくれてる。
視線を自分の手元に落として、手にしていたミネラルウォーターを口にする。
顔を上げると、朝子が変なカオでこっちを見ていた。
「……何?」
「知っててあの態度なわけ?」
「その気がないのに、思わせぶりな態度取るほうが酷でしょ」
「そっちの方が、酷だと思うけど。その気がないけど、お友達でいましょなんて。付き合う気がないなら、いっそバッサリ付き合いそのものもやめちゃえばいいのに」
「やだよ。みんなで集まるのは楽しいもん。
それに、今も金子があたしを好きかどうかはわかんないじゃん? 告られたのって、高校生のときの話だよ?」
「好きでしょ。アイツの目、ずっと鈴を追いかけてんだもん」
あたし、なのか、おっぱいなのか。
奥手なくせに、目元はちらちらあたしの谷間を追いかけてんだよね。
「……そっちの対象として見られてるかもしんないじゃん」
「あんたねぇ…。男なんだからそこは仕方ないでしょ。そんな格好で目の前ウロつかれたら、誰だってみるわよ。
あたしだって女ながらに鈴のボディにはムラムラくるもん」
「……朝子。そんな目であたしのこと、見てたんだ」
肩にかけてあったパーカーをわざとらしくかき寄せてみせたら、朝子が指であたしの頭を小突いた。
目が呆れてる。
「うそうそ。冗談だって」
余計なお肉がついてなくて、モデルみたいな体系の朝子。
スレンダーなボディが羨ましい。
胸なんて結局、脂肪のかたまりだから。
「まあ、金子が奥手すぎんのよね。気ぃきかせて、ふたりきりにしてやったのに、押しが弱いっていうか。押し倒すぐらいの根性見せれば、少しは進展するかもしれないのに」
いやいや。
こんなところで押し倒されても困りますけど。
「女は結局、強引な男に弱いんだから。ね?」
朝子の言葉に曖昧に笑った。
金子だけはダメ。
だってあいつは、みんなに優しすぎるんだもの。
ひと泳ぎしたみんなが着替えから戻ったあと、荷物を片付けて解散になった。
夜は飲みに行こうなんて話してたのに、朝子もみっちゃんも彼氏のお迎え。
とわと酒井くんの仲の良さにあてられたのか、大野まで「彼女に会いたくなった」なんて、キモイことを呟いて。
彼女からの電話に嬉しそうに耳を傾けながら、あたしを残して帰っていった。
なによ、みんなしてさ。
「あたしにだって、迎えに来てくれる男ぐらいいるんだから」
携帯を開きかけて、やめた。
上辺だけのあたしを見て、好きだ、かわいいって言ってくれる男に迎えに来られても、今は嬉しくない。
本物を手に入れた酒井くんの幸せに満ちた顔を見てたら、偽者にしかすがれない自分が虚しく思えた。
それに。
会えば絶対、朝まで帰してくれない。
今日はそんな気になれなかった。
「仕方ない。電車で帰るとするか」
夕焼けのオレンジが優しい波になって、ビーチを淡く染める。
多くの家族連れで賑わってたビーチは、気がつけばつけば恋人達の時間になっていた。
こういうとき、独り身は身にしみる。
広い通りに出て立ち止まった。
駅は、ビーチを挟んで北と南にある。
少し遠いけれど待合室のあるきれいな駅と、近いけれど待合室も自販機もないさびれた無人駅。
疲れてるなら近い方がいい。
大き目のショルダーバッグを肩に掛けなおしたあたしは、重い足取りで駅へ向かって歩き出した。
さすがに一日中、太陽の下にいるとキツイ。
日に焼けた肌はひりひりと痛むし、体は気だるさがぬぐえない。
久しぶりに本気を出したバレーボールは、日頃の運動不足がたたって、腕や脚が筋肉痛だ。
水を吸った水着やバスタオルを詰め込の荷物は行きよりも数倍重くなってる。
25を超えると何かと体が言うこと利かない。
ヒールなんて履いてくるんじゃなかった。
高架下の人気のないトンネルをくぐって角を曲がったところで、ギクと足を止めた。
外灯の下に男が数人たむろってる。
くわえた煙草からゆらゆらと煙が立ち上り、乾いた笑い声が聞えた。
見るからにガラの悪そうな集団。
ああいう輩には近づかないに限るけど、あそこを通らなければ駅には行けない。
道は一本しかないのだ。
来た道を戻ってもうひとつの駅に向かう手もあるけど、それには結構な距離を歩かなきゃならない。
疲れた体でそれは絶対、嫌だった。
大丈夫よね。
ただ、たむろってるだけだもん。
目を合わせないように、何食わぬ顔で通り過ぎればいいだけ。
来た道を戻ることよりも、間近に見える駅を選んだあたしは、無視を決め込んで早足で駅へ向かった。
「おい、あれ昼間の」
その中のひとりがあたしに気づき、こっちを見た。
その顔に、見覚えがあった。
派手な茶髪に日に焼けた肌。じゃらじゃらと趣味の悪いネックレスをぶら下げた、軽そうな男。
ビーチであたしに声を掛けてきたやつだ。
にやけた厭らしい微笑みを向けられて、嫌な予感がした。
男が隣にいる男になにやら耳打ちした。
そいつを含めて数人がこっちを振り返った。
まずい。
昼間より人数増えてる。
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]]> 恋愛コンプレックス 2 http://miimama.jugem.jp/?eid=453 2011-11-14T18:26:00+09:00 2011-11-21T06:42:39Z 2011-11-14T09:26:00Z
あたしの名前は、中田鈴。
平凡な名前からは似ても似つかない、派手な外見、メリハリボディが自慢の25歳。
独身。
さっきまで一緒だった彼、酒井ともひろは高校時代の同級生。
最近、あたしの親友、花井とわと結婚が決まって、幸せの真っ只中。
ずっと好きだっ... りくそらた 恋愛コンプレックス
あたしの名前は、中田鈴。
平凡な名前からは似ても似つかない、派手な外見、メリハリボディが自慢の25歳。
独身。
さっきまで一緒だった彼、酒井ともひろは高校時代の同級生。
最近、あたしの親友、花井とわと結婚が決まって、幸せの真っ只中。
ずっと好きだった彼女に、ようやく手が届いた。
くっつくなら、もっと早くにまとまってくれよって思う。
そうすれば、あたしだってこんなにモヤモヤすることなかったのに。
「あ、鈴。おかえりー。どこ行ってたの?」
ふたりを見送ったあと、みんなのいる場所に戻ってみれば、それぞれが時間を満喫していた。
泳いだり、ビーチバレーしたり、携帯いじってたり。
自由気まま。
「海の家」
「にしては遅かったけど、混んでた?」
「たちの悪いナンパにつかまったのよ」
「えー? またぁ?」
「すげぇな、中田。今日何人目だよー」
携帯をいじってた大野がこっちを見上げて、無神経にケラケラと笑った。
「うっさい。バカ大野!」
睨みつけたら。
「……なんか俺、悪いこと言ったか?」
バツの悪い顔で、隣の朝子と顔を見合わせる。
今あたしは、虫の居所が悪いのよ。
こういう場所でのナンパの数は、軽い女のバロメーターな気がする。
だってわざわざこんな場所で、本命を探したりしないでしょ。
男なんて、本能で動く生き物。
やることしか考えてない。
下品な話、てっとり早くやれればいいって、心の中で思ってる。
こういう場所で声をかけるのは、軽くて遊んでそうで、簡単にひっかかりそうな女。
それがあたし。
そりゃ、悪い気はしないよ。
いくら軽そうに見えても、「おっ!」って思える美人じゃなくちゃ声は掛けない。
女の魅力を感じなきゃエッチだってなしだ。
ていうか、あたしレベルだったら、かけられて当然だと思うのよね。
だって、女を磨く努力は日々してるもん。
通り過ぎたあとに立ち止まってまであたしをふり返る男を見ると、ガッツポーズを決めたくなる。
気持ちのいい優越感。
だけどそいつらは、あたしのことを好きってわけじゃない。
かわいい、タイプだって、いくら褒められても。
そこに『愛』はない。
まあ。
ナンパに愛を求められても困るんだけどね。
「あ、そうだ。とわね。お迎えが来たから先に帰ったよ」
知ってる。
今そこで会ったもん。
「ご飯食べに行くんだってさ。式を予定してるレストランで、打ち合わせも兼ねて。
あのふたり、一緒にいるのが自然すぎて、付き合ってるって言われてもイマイチピンとこなかったんだけど、そういうの聞くととホントに結婚するんだなぁって羨ましくなっちゃった」
「……朝子、カレシいるじゃん」
「いるけど……。長すぎてマンネリ。付き合い始めの頃はあれだけラブラブだったのに…気付いてみれば今や長年 連れ添った夫婦みたい。休日といえば、彼んちでマッタリ過ごすだけで、デートらしいデートなんて最近全然だもん」
あたしみたいに短すぎるのもどうかと思うけど。
マンネリになるほど、長すぎる経験なんて、あたしにはない。
「さて。うちらもそろそろお開きにしよっか。最後にひと泳ぎしない?」
「ゴメン。あたし今泳いできた」
バカな男に飲み物こぼされたから。
ついでにシャワーも。
「荷物見てるから行ってきなよ」
じゃあ、と頭を下げた友人たちが見えなくなったあと。
あたしはレジャーシートの上に腰を降ろして膝を抱えた。
数分前を思い出すと、気が滅入る。
水着もメイクも完璧だったのに。
あたしには見向きもしなかった酒井くん。
腕を取っても、自慢の胸を押し付けても、何も感じてないクールな横顔。
一応ね。
あたしに気がなくても、たとえ彼女がいるやつでも、ドキリとするのよ。
柔らかくておおきな胸を素肌に近い状態で押し付けられたりなんかしたら。
酒井くんは昔からそう。
過去に一度だけ付き合ったことがあるけど。
迫っても、キスをねだっても、体を重ねても、これっぽっちもあたしに興味を示さなかった。
いくら体だけの男でも、エッチの最中はあたしに夢中になるのに、あの人はあたしにはまったく興味がない。
あんな惨めなセックスは初めてだった。
べつにロマンスを期待してたわけじゃないし、人の男を誘惑したいとか、そういうつもりもない。
酒井くんがとわ以外の女に興味がないのは、ずいぶん前から知ってたし、とっくにあきらめてる。
だけど。
「ああも無反応だと、さすがに凹わ」
酒井くんはいつも、あたしの自信やプライドを、ことごとく覆す。
「……あーあ。なんか頭、痛いや」
ぐずと鼻を鳴らして、抱えた膝の上に額を乗せた。
「…ッ、きゃぁ!」
突然、頭に何かをかぶせられて、あたしは飛び上がる。
見上げれば、でかい図体を折り曲げた金子。
「なに、たそがれてんだよ、中田! らしくねーな」
あたしを覗き込む無神経な笑顔にイライラする。
ていうか、なにこれ。
麦わら帽子?
「……ダサ」
思ったことが口をついて出る。
被せられたのは、つばの広い大きな麦わら帽子。
よく畑で農作業してるおじいちゃんやおばあちゃんが被ってるみたいなあれだ。
「夕方っつってもまだ日差し強いんだからな、被っとけよ」
「やめてよ! 髪が乱れるから!」
それをますます深く被せてくるから、あわててとった。
ていうか、そんなのどこで売ってんのよ?
ていうか、それで電車に乗ってきたの?
信じられない。
「見た目よりも機能じゃん。遊びに来て病気になるほうがシャレになんない。
つか。俺、電車じゃなくて、バイクだって。 メット被って、首にこれぶら下げてぶっとばしてきた。首絞まるかと思ったけどな」
馬鹿じゃないのか、コイツは。
やることなすこと、いちいちガキっぽくってやだ。
もう25でしょ。
中学生じゃないんだから。
「つか、他の奴らは?」
「最後にひと泳ぎしに行った。あんたも行ってくれば」
はっきりいってウザイ。
隣に寄り添わないで。
可愛いあたしに、ダサいあんたじゃ釣合わない。
「いや、いい。もうしこたま泳いだし、ここに残る。ホラ、お前いろいろ心配だし」
心配?
「さっきも男に絡まれてたろ?」
見られてたのか。
ていうか。
「見てたんなら助けなさいよ」
あたしがあからさまに嫌な顔してたの、気づいたでしょ。
付き合い長いんだから。
「危なくなったら行こうと思ってたら、酒井の登場じゃん。俺が出ていけるわけないってー」
頭をかきかき、がははと豪快に笑う。
あんたにプライドはないのか。
そんなんだから、あんたはいつまでたっても脇役なのよ。
彼女できないのよ。
見た目がっつり体育会系なくせに、奥手で、お節介なぐらい人に優しくて。
草食系男子?
一時期流行ったけど、あたしは苦手なタイプ。
男ならさ、押し倒すぐらいの根性見せてみろ。
「…ああ、もう頭痛い」
あたしは膝を抱えた。
「ほらみろ。炎天下にそんなかっこでずっといるから」
「べつに日差しのせいじゃないけど」
腹が立つから言ってやった。
「ホルターネックってさ、一点で支えるから重いのよ」
「なにが?」
無邪気にきいてきた笑顔にますますムカついて。
「おっぱい」
わざと大きな声で言ってやったら、周りにいた知らない人が、ぎょっとした顔をした。
ついでに隣の金子もおんなじ顔。
ばっかじゃないの?
腹いせに、わざと腕で谷間を強調するように胸を寄せて、上目遣いで思いっきり顔を作って見上げてやった。
「ば、ばっか…ッ! お前、こんなとこで…ッ」
金子は予想通りの反応。
なによ、真っ赤になっちゃってさ。
酒井くんの無反応もイラつくけど、そういう反応もどうかと思う。
経験ぐらいあるんでしょうが。
「……もういいから。マジで頭痛いからあっち行ってよ」
わざとらしいため息をついて、手を降った。
ひらひらと。
「だったらなおさら、俺がいたほうがいいだろ! 倒れでもしたら……つか、医務室行く?」
「いいから、ほんとあっち行って。マジうざい」
「ちぇっ。人が心配してやってんのに…」
足げにされてふて腐れた金子が、諦めて立ち上がった。
相変わらずでかい。
真横に立たれるとぬりかべみたいな威圧感。
「何かあったら大声で呼べよ。あっちで泳いでっから」
あんた呼ぶぐらいなら、自分で歩いて行くわよ。
正義感溢れる、凛々しく逞しい男。
いちいちリアクションが派手で、あつかましくって。
金子がそばにいると、気温が二度上がる。
暑苦しい。
キライ。
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]]> おそろい。 http://miimama.jugem.jp/?eid=454 2011-11-11T20:12:00+09:00 2011-11-11T23:54:09Z 2011-11-11T11:12:00Z 〜とわの彼方に* ShortShortStory
*
一年目の結婚記念日に、約束をした。
「お祝いに、なにか記念に残るものを買いに行こう。なにが欲しいか、ゆっくり考えといて」
そう切り出した俺に考える間もなく。
「じゃ... りくそらた とわの彼方に*番外編 ShortS hortS tory
*
一年目の結婚記念日に、約束をした。
「お祝いに、なにか記念に残るものを買いに行こう。なにが欲しいか、ゆっくり考えといて」
そう切り出した俺に考える間もなく。
「じゃあ、おそろいのものがいい」
無邪気に笑って、彼女がそう言った。
だからてっきり。
ペアリングとか、腕時計とか、ブレスレットとか。
そういう身につけるものを選びに、オシャレなショップめぐりをするもんだと思っていたのだが。
なんでどうして、ここなんだ?
アニバーサリー当日。
俺が連れて行かれたのは、ジュエリー店でもアクセサリー店でもない。
派手な広告。数字が陳列された値札。
どこよりもとにかく安い!のビラが店内にたくさん貼ってある賑やかな場所。
大型の家電販売店。
家電で欲しいものがあるなら、アニバーサリーのプレゼントとしてじゃなく、買っていいから。
言っても彼女は、どうしても記念品はそれがいいのと、譲らなかった。
「ねえ、今日は車はやめようよ」
家を出る前、そう言った彼女のために。
行きは電車とバスを乗り継いだ。
帰りは家まで歩くという。
まるでスキップでもするかのような軽い足取りで前を歩く彼女の右手には、店の紙袋。
ふわふわ宙を漂う銀色の風船も、店でもらった。
嬉しそうに口ずさむのは、さっきまでいた店内で流れていたCMソング。
「ね。せっかくだから、そこの公園でお昼して行こっか」
帰り道に見つけた緑豊かな公園を指差しながら笑顔を見せた。
公園前のベーカリーで昼飯を買った。
うちの近所にもあるこの店のベーグルサンドはうまい。
毎日食べても飽きないそれは、うちの朝食の食卓にもよくのぼる。
だけど。
いくらうまいからといって、出かけたこの日まで、食べなくてもいいのにと思う。
記念日なんだから。
立ち寄った公園のベンチでは、さっそくとわが家電メーカーの箱を開けていた。
頬をほころばせた嬉しそうな横顔は、家に帰るまで待ちきれない子どもみたいだ。
ずうずうしくも。
すぐ使いたいからと言って、店で充電までしてもらってきてる。
いつの間に。
「……なあ、とわ」
「なあに?」
「おそろいのものって言ったよな」
「うん、言ったー」
「それのどこがおそろい?」
ふたつならまだしも、買ったのはひとつ。
彼女の言うおそろいの意味が、俺にはいまいち理解できない。
「わからない?」
「わからないから聞いてる」
真面目な顔で聞き返したら、ちょっと考えるような間のあと。
「ずっと欲しかったんだよねー」
はぐらかすようにそう言った。
確かにそれは、うちにはないもの。
理由は俺が嫌うから。
でも、いずれは持ちたいとは考えていた。
だけどそれが、一年目のプレゼントじゃなくてもいいのに。
「それに。どうせ買うならもっとしっかりしたの、買えばよかっただろ」
「ううん。これがいいの。大きさや機能にこだわらず、携帯できるやつ」
ああいえば、こういう。
焼きたてのベーグルの入った袋は、開封されることのないまま、ベンチの上だ。
先に食べてもいいと言われたが、ひとりで食ったってうまくない。
俺は腹を据えて、待つことにした。
彼女は自分の手元に必死だ。
こうなると、今やってることが落ち着くまで、何を言っても取り合ってくれない。
集中しているときの彼女はストイックだ。
横やりを入れると、すごく怒るんだ。
過去にそれで彼女を怒らせた俺は、一週間、禁欲生活を強いられた経験がある。
あれはとわが、友達に教わったばかりのネイルを、自分に試していたときだ。
いつになく必死な横顔が可愛くて、ほんの意地悪のつもりで手を出したら、止らなくなって最後まで抱いてしまった。
作業を中断させたうえに、中途半端に乾きかけのネイルは形を成さないまま乾いてしまい。
おまけに、買い換えたばかりのラグをマニキュアで汚した。
とわが激怒したのは言うまでもない。
セックスはおろか、キスも抱きしめることさえ許してもらえなかった一週間。
あれはさすがに、キツかった。
苦い記憶に眉をしかめてため息をついた。
べつに急ぐ用もない。
せっかくの記念日にそれが原因で喧嘩するのもいやだ。
納得いくまでいじらせて、あとでゆっくり話を聞こう。
ベンチに深く腰掛けて、煙草をくわえた。
吐いた煙が緩やかに空に流れて、風に消えた。
久しぶりに天気のいい休日だった。
こんなにも澄んだ空を見上げるのは、何年ぶりだろう。
普段は何かと忙しく、空なんか見る暇もない。
とわと出かける休日は決まって雨ばかり。
晴天の休日なんて、本当に久しぶりだった。
こういう休日の過ごし方も悪くないと、流れる雲を見ながらぼんやりと思う。
「……ねえ、これってどうやるの?」
穏やかな時間の流れの気持ちよさに目を閉じていたら、くいと袖を引っ張られた。
どうやら、行き詰ったらしい。
人に頼るのを嫌う彼女は、自分が納得するまでとことんやらなきゃ気がすまない。
甘えてくれれば、何でもしてやるのに。
まあ。
そういう、自立したとこも好きなんだが。
「かして」
とわが数十分、にらめっこで格闘していたそれは。
俺の手によって、あっさり解決した。
「すごい、ともひろ。あたしぜんぜんわかんなかったのに」
「……機械音痴」
意地悪く笑ったら、怒った彼女が俺の右の横腹をグーでパンチ。
この、暴力女め。
手加減してるみたいだから、まあ痛くはなかったけど。
「ん」
もう使えるそれをとわに手渡す。
「初めてはとわが使いたいんだろ」
「うん。ていうか。最初はもう決めてるから」
とわが手を伸ばして、それを俺たちが座るベンチへと向けた。
俺の肩にもたれるように寄り添って、空へと高く掲げる。
「では。記念すべき第一枚を。ハイ、チーズ…!」
カシャッと。
軽快な音が響いて、シャッターが切られた。
とわが欲しがったのは、コンパクトサイズのデジタルカメラ。
写真嫌いな俺のせいで、うちにはちゃんとしたやつがない。
カメラを確認しながら、隣で嬉しそうな顔。
「満足したか?」
「うん! デジカメってやっぱり携帯のカメラとは違うね。シャッタースピードも速いし、色もきれい」
写真の出来具合に満足したあと、被写体になりそうなものを見つけてはシャッターを切り、その都度チェックを忘れない。
満足げな横顔に俺は声をかける。
「……なあ。やっぱりそれとはべつで、他にちゃんとしたもの買いに行こうか」
「え。なんで?」
とわが見ていた液晶画面から、驚いたように顔を上げる。
「デジカメもいいけど……もっと記念日らしい品物を」
「……どうしてわかんないかな」
呟いた横顔はふくれっ面。
どうも拗ねたらしい。
「だって、お前がおそろいがいいって言うから」
「ちゃんとおそろいじゃない。ほら、よく見てよ」
買ったばかりのデジカメを見ろと言わんばかりに突きつけた。
ったく。
なにがおそろいなんだか。
ため息混じりに、とわが今、撮ったばかりの写真をチェック。
公園前で買ったお気に入りのベーグルサンド。
ふたつ並んだ缶コーヒー。
一緒に見上げた空。雲。風。
はじめて、そのカメラで撮ったふたりの写真。
「─────ね、わかる? 幸せがおそろいでしょう?」
とわが嬉しそうに見せてくれたそれは、ふたりぶんの幸せを詰め込んだ何気ない日常の風景。
だけどそれは、今。
同じ時間を共通している俺たちふたりの幸せの証。
……ああ。
おそろいって、そういうことか。
「そういう瞬間をこれからはひとつひとつ、形に残して行きたかったの」
彼女らしい、ユニークでかわいい発想に、自然と笑みがこぼれる。
そういうプレゼントも悪くない。
「あ。今の、すごくいい顔!」
澄んだ空に響くのは、気持ちのいいシャッターの音。
2年目が始まる音。
FIN〜
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]]> 恋愛コンプレックス 1 http://miimama.jugem.jp/?eid=452 2011-11-08T11:08:00+09:00 2011-11-14T09:29:23Z 2011-11-08T02:08:00Z
あたしにもいつか、『本物』がくるのだろうか。
*
「ねえ、カノジョ。今、ひとり?」
真夏の太陽がギラギラ眩しいビーチで。
注文していたドリンクが出来上がるのを待っていたら、声を掛けられた。
……またか。
ため息をポーカーフェイスの裏... りくそらた 恋愛コンプレックス
あたしにもいつか、『本物』がくるのだろうか。
*
「ねえ、カノジョ。今、ひとり?」
真夏の太陽がギラギラ眩しいビーチで。
注文していたドリンクが出来上がるのを待っていたら、声を掛けられた。
……またか。
ため息をポーカーフェイスの裏に隠して、振り返れば男がふたり。
にやにやした笑顔を浮かべながら、あたしを見下ろしていた。
「可愛いねー、水着。すげえ似合ってるんだけど」
「それ、どこで買ったの?」
下心の滲み出た視線が、上から下まであたしを撫で回すのはいつものこと。
それが胸元で止ることにも気づいてる。
おっきな胸はあたしのセールスポイント。
水着だってそれがちゃんとキレイに見える色とデザイン選んでるもん。
男ならそこに目が行くのは普通。
だけど、あからさまに下品な視線はいや。
「俺らあっちの浜辺でジェットスキーやってんだけどさ、よかったら一緒にやらない?」
「……いい。友達と来てるから」
「友達も誘っていいよ」
「やったことないし、遠慮しとく」
「俺、インストラクターの免許持ってるし、初心者大歓迎!」
「でも、興味ないから。他当たってよ」
適当にかわしながら、注文していたトロピカルサワーを受け取った。
「つれないなぁ。他の子じゃなくて君がいいんだよ。俺すっげータイプなんだよ、君のこと。カワイイし、スタイルいいし」
なにがタイプだ。
中身を知りもしないくせに、よく言う。
アンタらが好きなのは、どうせあたしの身体でしょ。
そのサングラスの下が常にアタシの胸元やビキニラインを追いかけてることなんて、とっくのお見通しなんだから。
軽蔑を込めた視線で上から下まで撫で回してやると、何を勘違いしたのか、誇らしげに白い歯を見せて、茶色い髪をかき上げた。
あーやだやだ。
こういう自意識過剰男は。
ジャラジャラ下げたネックレスや、無駄に多く開けたピアス。
ひけらかす自意識過剰な態度。
こういう男、大きらい。
「西海の方にさ、泳いでは行けない入り江があって、すげえ海が碧くて最高なんだよ。穴場! 綺麗な魚がいっぱいいるし。ニモとか興味ない?」
ニモが流行ったのはいつの時代だ。
子どもじゃないんだから、魚ぐらいで女が釣れるか。
ていうか。
カクレクマノミは熱帯海域のサンゴ礁に分布・生息する魚でしょうが。
どこにでもいるわけじゃない。
知識のなさを暴露してるって自分で気づけないのか、この男。
「なあ、行こうぜ?」
しつこい!
「なぁってば! 無視すんなよ!」
「…あっ」
突然、腕を取られたもんだから、手にした飲み物がこぼれた。
「やめてよ、もう!」
30分も並んで買ったのに!
人気ドリンクで、もう売り切れちゃったんだから!
あたしは恨みを込めた視線で、キッと男を睨み上げた。
だけど男は動じない。
それどころか。
「わざとじゃないんだぜ? ごめんな? 新しいの買ってやるから行こうぜ」
なんてへらへら笑って。
「水着、平気だった? あちゃー、キワいところにこぼれたなぁ」
谷間を覗き込むにやけた顔。
わざとか、この男。
さすがのあたしもカチンときて一発ひっぱたいてやろうかと、拳を握り締めたところで声を掛けられた。
「……中田?」
その声であたしは思いとどまる。
「酒井くん……」
振り返れば、眼鏡の奥の鋭い瞳と視線がぶつかった。
なんてタイミング。
「……誰? 知り合い?」
あたしと酒井くんを交互に見比べながら男が言う。
この際、利用できるものはさせてもらう。
「カ・レ・シ」
酒井くんの腕に自分の腕を絡ませて、上から見下ろすように言ってやった。
えっ、と短くつぶやいて。
無遠慮な視線が酒井くんを上から下まで撫で回したあと、さすがに適わないと判断したのか顔を見合わせる。
「男いんなら、最初から言えつうの」
チッと舌打ち混じりに負け惜しみなセリフを呟いて。
男たちはそそくさと逃げ出した。
はあ?
なに言ってんの。
あたしぐらい可愛かったら、カレシのひとりやふたり、いるのは当たり前。
ていうか海にひとりで来るわけないでしょ。
バーカ。
心で悪態ついて。
「ありがとう、酒井くん。助かった」
とびきりの笑顔を作って、上目気味に酒井くんを見上げる。
「いや。俺は何もしてない」
低くそう言うと、絡めた腕を解かれた。
ちぇっ。
ちょっとでもダメなんだ。
あいかわらず変なところで堅いんだから。
べつに誰かに見られたところで、誤解されたりする仲じゃないんだからさ、そんなにあからさまじゃなくてもいのに。
まあ。
アイツらの前で腕を振りほどかれなかっただけでも、感謝しなきゃいけないんだけど。
「仕事帰りにお迎え?」
Yシャツにネクタイ、スラックスに革靴。
リゾート地に場違いな服装は、仕事帰りの証拠。
「ちょっと早くない? 遅れて来させた上に、もう連れて帰るわけ?」
「思ったよりも早く終わったんだよ」
「だったら酒井くんも遊んで行きなよ」
「この格好でか?」
呆れ顔があたしを見下ろす。
「いいじゃん、べつに。
ていうか、大野に服借りれば? アイツ衣装持ちだからさ、持ち合わせてんじゃない? 体系も同じぐらいでしょ」
金子はマッチョ系だから、スレンダーな酒井くんとはちょっと違うし。
「そこまでしなくていい。遊んで帰るつもりないから」
「海キライ?」
「キライじゃないけど、好きでもない」
「じゃあさ、夜は? たぶん遊んだあと、みんなで飲みに行くだろうからさ、そっちに加わわんなよ?」
それだったら、その格好でも平気でしょ。
「悪い。このあと、店予約してる」
「店?」
「ああ」
「とわと?」
「他に誰がいるんだよ」
「……ふぅん」
「……なに」
「べっつにぃ」
早く終わったんじゃなくて、早く終わらせただけのクセに。
店の予約だって無理矢理ねじ込んだクセに。
要はさっさと、大事な彼女を連れて帰りたいわけでしょ。
独り占めしたいわけでしょ。
知ってるんだからね。
彼女の可愛い水着姿を見せたくなくて、体中にキスマークつけてたこと。
ビーチバレーができないほど、激しく抱いたことだって。
涼しい顔が腹立たしいから、知ってること全部暴露してやろうかと思ったけど。
たぶん言ったところで、動揺する人じゃない。
むしろ認めて、仲のよさを思い知らされそう。
余計に惨めになりそうだから言うのはやめた。
自分のために。
「…わ。見て、あの人……」
リゾート地に場違いな服装が視線を集める。
ううん。
酒井くんの存在自体が、視線を集めてしまうんだ。
「……さすがにこの格好じゃ暑いな」
夏の日差しに顔を歪めてネクタイをゆるめる仕草まで、嫌味なぐらいかっこいいんだもん。
ていうか、ホント嫌味でしょ。
こんなタイミングで現れるなんて。
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]]> LoveLetter 3 http://miimama.jugem.jp/?eid=449 2011-10-24T17:44:00+09:00 2011-11-09T13:35:10Z 2011-10-24T08:44:00Z *******************************************
Love Letter 3 サイド*masiro
*******************************************
広い通りに出てタクシーを捕まえて、ホテルに移動した。
フロントで荷物をお願いして、部屋へと上がる。
案内された部屋は、ふ... りくそらた LoveLetter
Love Letter 3 サイド*masiro
*******************************************
広い通りに出てタクシーを捕まえて、ホテルに移動した。
フロントで荷物をお願いして、部屋へと上がる。
案内された部屋は、ふたりで使うにはもったいない広さで。
家具や調度品、照明に至るまで、しつらえの全てにこだわったデラックスルーム。
地上18階の大きな窓から見える夜景は、星屑を散りばめたみたいに綺麗だった。
「……こんな高そうな部屋、いいのかな…」
「いいんだよ。姉貴から俺たちに卒業祝いってことだから」
部屋は海月さんからの、卒業のお祝いのプレゼント。
嬉しいけど……。
ここまでグレードの高い部屋だと気を使う。
だって。
キッチンとか、部屋専用の露天風呂とかあるんだよ?
ダーツとか、Wiiとか、ボードゲームとか。
娯楽設備も充実していて、一晩じゃ使いこなせない。
さっそく部屋を探索していた蒼吾くんが、備え付けられた冷蔵庫を開けてやんちゃな笑顔を見せた。
「飲む?」
手にはビールの缶。
私は慌てて首を横に振る。
だって。
アルコールはまだ、味も楽しみ方もわからない。
「だよな? つか、酒がうまいと思えんし」
…そうなの?
てっきり、蒼吾くんは飲める人かと思ってた。
四国のおじいちゃん、強かったし。
日本酒とか、ぐいぐい飲んでたもん。
あの血を引いてれば、蒼吾くんもかなり強いはずだけど。
「まだ知らなくていい。どうせそのうち、嫌でも付き合わなきゃいけなくなるときが来るんだし。
それに今日は酒に潰れて大事な時間、台無しにしたくねえもん」
缶ビールをもとの場所にしまいながら、蒼吾くんが窮屈そうにネクタイを緩めた。
「あーッ、疲れた!!」
革靴を蹴飛ばして、そのまま勢いよくベッドにダイブ。
上質のスプリングが、蒼吾くんの大きな体を柔らかく跳ねさせた。
気を利かせてくれたのか、部屋はツインじゃなく、ダブル。
そういう関係なのがお見通しなのは、ちょっと恥ずかしい。
「蒼吾くん。ちゃんと脱いでからじゃないと、皺になっちゃうよ…」
「べつにいいよ。すぐにクリーニング出すし」
「でも……」
「ましろも靴、履き替えてこいよ。痛いんだろ?」
慣れないヒールは半日もしないうちに、私の両足に大きな水ぶくれを作った。
あまりの痛さに、ママに電話して履きなれたミュールを持ってきてもらったほど。
背伸びはダメだなぁ。
ぺったんこのスリッパに履き替えたらホッとした。
靴はやっぱりこうでなくちゃ。
キラキラをたくさん散りばめたストッキングも、ほんとはずっと気持ちが悪かった。
早く脱いで足を開放したいところだけど、蒼吾くんの前でそれはやめた。
お風呂はいるときにしよう。
「─────ましろ」
柔らかく呼ばれた気がして振り返ったら、蒼吾くんが笑ってた。
ベッドの上で胡坐をかいて、ぽんぽんって。
その隣を叩く。
甘い微笑みが私を誘う。
えーっと……。
「……先に、着替えてしまいたいんだけど……」
シフォン生地のワンピース型ドレスは皺になりやすい。
この日の為にママに頼み込んで高いドレスを買ってもらったから、大事にしたい。
「ダメ。今すぐ来て」
「今すぐって……」
「可愛いから脱ぐの禁止。つか、もっと近くで見せてよ。一日中バタバタしてて、俺ちゃんと見れてない」
困る、その顔。
ちょっと意地悪な、いたずらっ子の顔。
そんな顔でお願いされたら、NOなんて言えるはずがない。
おずおずと距離を寄せる。
すぐそばまで来たら、もどかしいといわんばかりに、蒼吾くんが私の腕を引っ張った。
優しいけど、少し強引に。
「わ…っ!」
身構えてなかった体は、ぽすんと蒼吾くんの腕の中に納まって。
そのままぎゅっと抱きしめられた。
子どもが母親に抱きつくみたいに、腰に腕を回して抱きついてくる。
短く立てた髪が顎に当たった。
汗かくと匂いがキツクなるからいやなんだ、って。
普段は何もつけてない髪が、今日は整髪料で整えられてる。
いつもと違う蒼吾くんの匂い。
礼服もネクタイも。
俺が着ると七五三みたいで笑っちゃうよな、なんて蒼吾くんは言ってたけど。
ちっともそんなことないの。
格好よくて、大人びて見えて……ドキドキする。
「……この服。いつ買ったの?」
蒼吾くんが下から見上げた。
「わりと…最近」
先週…だったかな。
「日下部と?」
「選びに行ったのは凪ちゃんとだけど、最終的にはママに見てもらったの。
……似合うかな?」
「うん。すげえ、可愛い。ましろに似合ってる。スカートがちょっと短すぎる気もするけど……今は俺しかいないから、それも良し」
「なにそれ…」
蒼吾くんが眩しそうに目を細めて、私の手を取った。
そのまま胸の高さまで持ち上げられて、社交ダンスでもするみたいにくるりと回された。
スカートがふわんと膨らんで、柔らかく落ちてくる。
「うん。やっぱ可愛い」
もう一度言われて、恥ずかしさに逃げたくなった。
誰よりも蒼吾くんに褒めてほしかった。
だけど、そうやって面と面を向かって何度も言われると。
嬉しさよりも恥ずかしさが勝ってしまう。
なんだか、私が言わせてるみたい。
「……もういい?」
「まだもう少し。脱ぐなら俺が脱がせたいし」
「やだ、そんなの。自分で脱ぐから」
真っ赤になって慌てた私を喉の奥で笑いながら、くるりと体勢を変えた。
視界が回転する。
今度は私を後ろから抱きしめて、蒼吾くんが首筋に顔を埋めた。
「……疲れた?」
「ううん。平気。すごく楽しかった」
蒼吾くんの親族は賑やかで、温かで、優しくて。
みんな大好き。
「久しぶりに四国のおじいちゃんとおばあちゃんにも会えて、嬉しかった。
次は蒼吾とましろちゃんの番ね、って言われたよ」
「俺も言われた。つうか、催促? 早くひ孫の顔が見たいとか、順番飛び越えてるだろ」
指が優しく髪を梳く。
くすぐったくて、でも気持ちいい。
「ふたりともましろのこと、気に入ってるからなぁ」
私も。
おじいちゃんもおばあちゃんも、大好きだよ。
「…でもさ。俺が葵よりも先に結婚したら、絶対、殺されると思わねえ?
見たか? ブーケトス。普通、あれって友人だけだろ? 親族は遠慮するもんじゃね? なのに一番まん前陣取ってさ、必死の形相で花を奪い取って、どんだけ結婚願望高いんだよって俺、身内としてすげえ恥ずかしかった」
数時間前の葵さんを思い出して、私はくすくすと笑った。
「気迫に負けて……つうか、葵に遠慮して、誰もブーケ取れないし」
「でもね、そのブーケ、私がもらったんだよ?」
「…マジで?」
「うん。ずっと持ってたでしょ。あれがそう」
受け取ったままの形で、ブーケがテーブルの上に置かれてる。
あとでお水につけなくちゃ。
「あの花束、ブーケだったのか」
「私のために葵さん、一所懸命取ってくれたみたい」
「葵が人のために、ねぇ…」
「なんかみんな、いろいろ気を使ってくれてる」
優しさが温かくて、胸が痛くなる。
「そっか……」
おっきな手が髪をかきまぜたあと、そっと私の手を握った。
温かくて頼もしくて、優しい手。
あたしの指に絡んでくる指は、長くて、ゴツゴツしてて、骨ばってて。
たくさん豆が潰れた皮のぶ厚い手は決してキレイとはいえないけど、いつも私を包み込んでくれる優しい手。
その手をに握りしめると、胸が少し苦しくなる。
「……すごいね」
「うん?」
「夜景。星が地上にあるみたい」
「……気に入った?」
「もちろん。でも……、こういう人工的な夜景よりも、四国のおばあちゃんちで見た本物の星空の方が私は好きかな。すごいよね、あれ。星が降ってくるっていう感覚、初めて経験した。あの星空はどこにも負けないよ……」
「それ、ばあちゃん達に言ってやって。すげえ喜ぶから」
まるで自分が褒められたかのように、蒼吾くんが嬉しそうに顔をほころばせた。
「……また、行けるかな?」
河で遊んで、北村のお店のアイス食べて、縁側で花火するの。
今度は向日葵畑にも行ってみたいな。
「次行くときは水着、着てくれる?」
「えー…。考えとく」
「着てくれないなら、連れてかない」
蒼吾くんがそっぽを向いて、本気でむくれた。
ひどいなぁ、蒼吾くん。
あたしが泳げないの、知ってるくせに。
「だから教えてやるつってるじゃん」
「……やだ。蒼吾くん、スパルタっぽいもん」
「彼女には優しくします」
「ほんとう?」
「ああ。ホント。だから、今年の夏も行こう」
大人びた笑顔を見せて、蒼吾くんが手を出した。
「ゆびきり」
本当は指切りは小指同士で約束するものだけど。
蒼吾くんが差し出したのは、左手の薬指。
一瞬戸惑った私の手を取って、向かい合う。
真摯な瞳が、真っ直ぐに私を見つめた。
「─────約束する。今年だけじゃなくて、来年も再来年も。夏だけじゃなくて、ふたりで旅行とか楽しいこといっぱいしよう。……なっ?」
そう言って覗き込んだ蒼吾くんの笑顔が、あまりに優しくて。
薬指を絡めたら、泣いてしまった。
ずっと我慢していたものが、止らない。
今日は絶対、泣かないつもりだったのに。
「ごめ…んなさい、ごめ…っ、泣くつもりなんて、なかった、のに……っ」
ぬぐってもぬぐっても、それは止らなかった。
堰を切るように溢れた涙はこぼれて、ポロポロと頬を伝う。
声を殺して泣き始めた私を、蒼吾くんはしょうがねぇなぁって、ポンポンと頭を撫でてくれたあと。
今度は正面から、優しく抱きしめた。
「……なあ、ましろ。頑張らなくていいから。一緒にいる今から、我慢しなくていい。
もうお前、ずっと我慢してるだろ? そうさせてんの、俺だけど……お前がそういう顔してんの、辛いんだ。こっちのがどうにかなりそう」
そう言う蒼吾くんだって。
今日はいつも以上に、はしゃいで、テンション高くて、優しくて。
私が泣かないように、寂しくないように。
精一杯気を使ってくれてるの、ちゃんと知ってたよ?
だから私も応えたかった。
とびきりの笑顔を見せて、明日からはもう、この街にはいない蒼吾くんを。
ちゃんと笑って、送り出してあげたかった。
ぎゅっと抱きしめてくれる蒼吾くんの力強い腕。
人より少し高い体温。
ましろ、って鼓膜を響かせてくれる、優しく低い声。
明日からは、隣には、いない。
「……荷造り、できた?」
「昨日、全部送った。あとは身の回りのものと一緒に……オレが行けばいいだけ」
「そっか……」
それ以上は声にならなくて、私は顔を押し付けるみたいにして、蒼吾くんに抱きついた。
一緒にいるのに、寂しい。苦しい。
「たくさん泣かせると思う。勝手に決めてごめんな。
俺が進路を決めたとき、行って来いって、背中を押してくれて本当に嬉しかった。ましろが俺の彼女で本当によかった。
そばにいられなくてごめん。でもそのぶん、電話する。メールもする。休みが取れたら、会いに行くから─────」
ぎゅうっと、背筋が弓なりになるほど強く抱きしめられた。
語尾が掠れて歪んでる。
顔は私の髪に埋められて見えないけれど、泣いてるのかもしれなかった。
胸が破れそうになる。
「約束する。卒業したら絶対、園田のこと迎えに行くから。
4年間、待っててほしい」
蒼吾くんの腕の締め付けが強くなる。
息苦しいぐらいに抱きしめてくれる。
確かにここにいる、ここにある。
その現実が切なくて、苦しくて。
もう、涙が止らなかった。
明日は泣かないから。
笑顔で見送るから。
今日だけは蒼吾くんの胸で、泣かせて。
形に見える絆が欲しかった。
すがるものが欲しかった。
これから。
それぞれの道を歩むことになる私たちの未来に、確かな約束が。
ねえ、蒼吾くん。
その頃の私たちにとって、この恋が全てだった。
なんの疑いもなく、信じてた。
たとえ距離が遠く離れてたとしても、私たちふたりの絆は永遠なんだって。
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]]> LoveLetter 2 http://miimama.jugem.jp/?eid=448 2011-10-21T12:11:00+09:00 2011-10-24T08:51:23Z 2011-10-21T03:11:00Z *******************************************
Love Letter 2 サイド*masiro
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楽しく幸せな時間はあっという間に過ぎた。
「新居、近いから遊びに来てね」
手土産を渡しながら、海月さんが笑う。
「今度... りくそらた LoveLetter
Love Letter 2 サイド*masiro
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楽しく幸せな時間はあっという間に過ぎた。
「新居、近いから遊びに来てね」
手土産を渡しながら、海月さんが笑う。
「今度また、蒼吾くんと一緒におじゃまさせてください」
「…ええ。待ってるわ」
蒼吾くんのご両親と、四国のおばあちゃん達にも簡単なお礼と挨拶を済ませて帰ろうとすると、海月さんの旦那さんになった信吾さんが私達を呼び止めた。
「あれ。ふたりは二次会来ないの?」
「…あ。すみません。今日はもう」
断ると残念そうな顔をする。
「最後まで付き合えとは言わないから、少し顔を出さないか? ゆっくり話もしたいし…」
信吾さんは少し、酔っぱらってるらしかった。
断られたことに対して、強要する人じゃない。
新郎に用意されたお酌用のアルコールを捨てるバケツに、あまりお酒が入ってなかったって。
海月さんが心配してたのを思い出す。
そういえば信吾さん。
注がれたお酒には全部、律儀に付き合ってたっけ。
僕らのために祝ってくれた酒を捨てるなんて、幸せを捨てるみたいで嫌だ、って頬を紅く染めながら。
あまり強い方じゃないのになぁ、って苦笑いを浮かべる海月さんの顔は、でもそういうところが愛おしいんだってニュアンスを醸し出していて、ふたりの仲のよさを実感した。
「ごめんな、信にぃ。明日、早いんだ。また近いうちに顔出すよ」
「近いうちっていつだよ、蒼吾。明日か?」
「……なわけねぇだろ」
蒼吾くんがめんどくさそうに頭をかく。
面倒なことにつかまっちまった、そんな顔。
「遅くても、ゴールデンウイークまでには顔出すよ」
「えらく先じゃないか」
「俺も暇じゃねえから……」
「だったら、なおさら顔出して帰れよ。蒼吾がだめなら、ましろちゃんだけでもいいし…」
しつこく催促されて。
蒼吾くんの顔が少し、不機嫌になった。
「ましろだけとかって、それこそ無理だから。コイツ、人見知り激しいし」
「人見知りもなにも。知り合いだらけだろ?」
「コイツの知り合いはうちの身内だけ。だいたい、親族は二次会に来ねーし。ましろにとったら他人だらけじゃねーか」
「だったら蒼吾も…」
「だーかーらぁ、明日、早いから無理なんだって。寝坊とか、ありえねえから!」
蒼吾くんが私の背中を押した。
行こう、ってうながす。
いいの? 信吾さんこのままにしちゃっても…。
「水臭いこと言うなよ。僕はただ、今日の幸せを弟とその恋人と、分かち合いたいだけで…」
しゅんと、子どものように顔を伏せた信吾さんは、耳の後ろまで真っ赤だった。
熟れた林檎みたい。
そっか。
かなり酔っぱらってるんだ。
普段の真面目な信吾さんからは想像できない弱弱しい表情に、さすがの蒼吾くんも邪険にはできないと思ったのか。
帰りかけた足を止めた。
大きなため息を吐き出す。
「気持ちは嬉しいけど…。今日だけはマジでゴメン。また今度顔出すから」
それでも蒼吾くんの意志は強かった。
蒼吾くんがNOだと言えば、NO。
その頑固な性格は、信吾さんもちゃんとわかってるはずなのに、お酒が入ってるからてんでダメ。
なんだか気の毒になってくる。
「あの……、少しだけなら顔、出しましょうか? お酒は飲めないですけど」
思わずそう切り出したら、馬鹿っ、って小さく睨まれた。
だって…。
こんなに一生懸命なのに、断るのはなんだか申し訳なくて。
ちょっとだけなら…。
「ああ、もうっ、信吾さん?! なにやってるのよ、見苦しい! 絡まないでって言ってるでしょ」
別の招待客と話していた海月さんが戻ってきて、私たちの間に割り込んだ。
「また今度があるじゃない。蒼吾は私の弟なんだし」
「今度なんて言ってたら、いつ会えるかわからないじゃないか。だって蒼吾くんは」
「はいはい。わかってるなら、野暮なことはしないの!」
今のうちに行ってと海月さんが目配せをする。
「海月さん、私少しだったら……」
「いいの。気を使わないで。この人、酔っぱらってるだけだから。普段だったらこんな無茶は言わない。今日みたいな日にふたりを引き止めたなんて知ったら、あとで絶対後悔するから。信吾のためにも、行って」
「でも……」
「……今夜は蒼吾とお泊りでしょ?」
海月さんが私の耳元に顔を近づけて、嬉しそうに耳打ちした。
返事の代わりに、私の顔がみるみるうちに赤く染まる。
分かりやすくてイヤになる。
「ほら、蒼吾。さっさとましろちゃん、連れて帰って」
ぼやぼやしてたら本当に朝まで付き合わされるわよ?って、海月さんがちょっと意地悪に笑った。
「……サンキューな、姉貴。しばらく会えないけど…頑張れよ」
「そっちこそ」
「出戻ってくるんじゃねーぞ」
「アンタに言われたくなーい」
「……じゃあ、海月さん。今日はこれで」
私は深く頭を下げた。
「蒼吾。ましろちゃん、泣かすんじゃないわよ」
「そんなことしねえよ。バーカ!」
蒼吾くんは最後まで悪態ついて。
だけど海月さんに向けられた笑顔は、とっても柔らかであったかい。
親しい人にだけ向けられる、特別な顔。
お嫁に行っても、苗字が変わっても。
海月さんはこれからもずっと、蒼吾くんのお姉さんであることに変わりない。
クロークに預けておいた荷物を受け取って、式場を出る。
時刻は8時を回っていて、星はとっくに瞬き始めている。
3月といっても夜はまだ寒かった。
北風に肩をさすったら、蒼吾くんが首に巻いていたマフラーで冷えた体を包んでくれた。
あったかい。
「あーあ。信にぃ、もう姉貴に主導権握られてやんの。10も年上なのに、あれでいいんかね」
ふたりのやりとりを思い出しながら、蒼吾くんが肩をすくめる。
「主導権とかそういうの、どっちでもいいと思う。幸せそうだったから、ふたりとも」
幸せの形は、恋人の数だけ違うのよって。
いつか私が悩みを相談したとき、海月さんが教えてくれた。
背中を押してくれた。
あの時の言葉は、今でも私の心の根っこのところにちゃんと存在する。
「まあ、うちも父さんより母さんだったし。家族構成的にも圧倒的に女が多いから、夏木家はどうしても女が強くなるよな」
「蒼吾くんのお姉さん、私好きだよ?」
強くて、明るくて、優しくて、真っ直ぐで。
私もいつか、海月さんや葵さんみたく強くなりたい。
なれるかな?
聞いたら、蒼吾くんが苦い顔をした。
「いや、そこ。見習わなくていいから。つか、あいつらを手本とか、絶対やめて」
心底嫌そうに顔を歪めた見せた蒼吾くんがおかしくって、また笑った。
自販機で飲み物をふたつ買って、そのうちの一本を蒼吾くんから受け取る。
熱くて甘いミルクティー。
口に含んだら、ホッと顔が緩んだ。
リングプルを開けながら、蒼吾くんが私を見下ろした。
「つか、ましろ。俺すげえ心配なんだけど」
「うん?」
「お前のお人よしなのと、流されやすいのと、人をすぐ信じる性格。いつかそれが裏目に出て、取り返しのつかないことになっちまうんじゃないかって、俺はすげえ心配で…」
「だけどやっぱり、人を疑うよりもまず信じたいから……」
思ったことを素直に口に出す。
蒼吾くんがじっと私を見つめて、大きなため息をついた。
「……ま、そういうところがましろなんだけど」
しょうがねぇよなぁって、ポンポンと頭を撫でて笑う。
ちょっと唇の端を持ち上げた微笑み。
じっと見つめられて、頬が熱くなるのを感じた。
「蒼吾くん、なんか保護者みたい」
「心配なんだよ、いろいろと。お前、危なっかしいから。ふわふわしてて、風船みたいだし。ちゃんと紐、つかまえてないと不安で。怖くて」
「間違ってたら、軌道修正してくれるんでしょ? 蒼吾くんが」
ずっと前に、そう言ってくれたよね?
「してやるけど。でもそれは、もしもの話で。やっぱり棘の道より、無難で安全な道を歩んで欲しいって思うだろ?」
「心配性だなぁ…」
「悪いか」
「悪くないよ。嬉しい…」
幸せを噛締めた横顔に、蒼吾くんの唇が優しく触れる。
空いた方の手をそっと握られた。
「……手、あったかいな」
「紅茶があったかいから」
「俺も、ぬくいやつにすればよかった」
「……寒いのにサイダーとか、ありえないよ」
蒼吾くんが買ったのは、冬なのに絵柄が夏仕様のサイダー。
寒くないのかな。
でもそれが、あまりに蒼吾くんらしくて、似合いすぎて、笑っちゃう。
「俺、珈琲とか紅茶とか、苦手なんだよ。どっちも独特な口に残るような苦味、つうの? あれがどうにも苦手でさ」
「私も珈琲はダメだけど……、紅茶は甘くておいしいよ?」
「それはましろの顔見てたらわかるけど」
また唇が軽く触れる。
今度は唇に。
「甘い。けど、苦い…!」
そんなの。
キスしたあとに、言わないでほしい。
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]]> LoveLetter 1 http://miimama.jugem.jp/?eid=447 2011-10-19T09:56:00+09:00 2011-10-21T03:43:20Z 2011-10-19T00:56:00Z *******************************************
Love Letter 1 サイド*masiro
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純白のドレスに、色鮮やかなブーケ。
真っ青な空から雪のように舞い落ちるのは、たくさんの幸せを散りばめた色。
私の瞳に映る... りくそらた LoveLetter
Love Letter 1 サイド*masiro
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純白のドレスに、色鮮やかなブーケ。
真っ青な空から雪のように舞い落ちるのは、たくさんの幸せを散りばめた色。
私の瞳に映る世界は、虹色だった。
*
「……誰だ、あれ。別人なんだけど」
ボソリと聞えてきた言葉に私は隣を見上げて、思わず苦笑いをした。
「これなら姉貴でも出れるんじゃね? あの番組! ビフォーとアフターでこんなに違いますって、あれ。プロってホント、すげえな! 」
悪態ついたセリフが照れ隠しなのは知ってる。
眩しそうに、嬉しそうに。
目を細めた横顔が、言葉を裏切ってるから。
春、3月。
夏木家の一番上のお姉さんが結婚した。
私と蒼吾くんは18になって、ついこの間、高校を卒業したばかり。
それぞれが思い描く未来の地図を片手に、新しい第一歩を踏み出そうとする、そんな季節のハッピーなイベントは、私達にも幸せを運んでくれた。
胸がいっぱいになる。
「……海月さん、綺麗だね」
もともと綺麗な人ではあったけれど、この日の海月さんは私が知ってる彼女の中で一番綺麗だった。
マリアベールに包まれた横顔は、柔らかで優しくて、幸せが滲み出てる。
結婚したら、何かが変わるのかな?
ずーっと一緒にいられて、羨ましい………。
いつかは私も─────。
そんな未来を想像しながら隣を見上げたら、蒼吾くんと目が合った。
いつから見てたの?
なにか言いたげな瞳が、じっとこっちを見つめてくる。
「なに?」
「ましろは短いヤツだな」
「?」
「ウエディングドレス。ロングもいいけど……お前小ちゃいし、足がキレイだからミニ丈の方が似合いそう」
……珍しく真剣な顔してると思ったら。
そんなこと考えてたの?
「姉貴の他にも何組かすれ違っただろ? 花嫁見るたびにウエディングドレスつっても、いろんなのあるんだなぁとか考えててさ。ましろだったらこういうデザインが似合って、ベールは姉貴みたいなマリアベールじゃなくて、ふわっふわの柔らかいヤツで、ブーケは……とか、いろいろ考えてた。……俺、顔にやけてなかったか?」
嬉しいような恥ずかしいような、手に余る幸せがこそばがゆい。
照れ隠しに振り上げた手を蒼吾くんが捕まえて、そのまま強く引かれた。
蒼吾くんが私の耳元に唇を近づける。
ぐっと近づいた距離にトクンと鼓動が跳ねた。
「なあ、ましろ─────」
そっと。
蒼吾くんが耳打ちしてきた言葉に、ぶわっと顔が朱に染まるのが自分でも分かった。
そんな私を見て、蒼吾くんが大人びた笑顔を見せる。
最近の蒼吾くんは時々、こんな表情をする。
幼さの抜けた男の人の顔。
なんだか知らない人みたいで、ドキドキする。
「蒼吾、こっち来てー! シャッター押してよ」
「おう! 今行くー!」
ちょっと待ってて、って。
また大人びた顔をのぞかせて、蒼吾くんが呼ばれた方へ走ってく。
大きな背中を見送りながら、私は頬を両手で覆った。
顔のほてりが治まらない。
気を抜いたら涙が出てきそう。
だって、さっきの言葉は─────。
「ましろちゃん、蒼吾知らない?」
言葉の余韻にぼんやりしてたら、背後から声を掛けられた。
「……あ。
今、お母さんに呼ばれて、あっちでシャッター押してます」
「えー? こっちが先だって言ったのにー」
肝心なときに使えないヤツ、と。
拗ねたように頬を膨らませたのは夏木家の二番目のお姉さん、葵さん。
背中の大きく開いた紺碧のドレスを身に纏った彼女は、今日も一段と派手で艶やかで。
同姓から見ても魅力的なオーラに、つい見とれてしまう。
年はそんなに違わないのにな。
葵さんの隣に並ぶと、中学生のように見えてしまう自分か悲しい。
「……ましろちゃん?」
綺麗な横顔を見つめてると、視線に気づいた葵さんが私を振り返って、不思議そうな顔をした。
なに?
「顔、赤いけど…大丈夫? もうアルコールが回っちゃった?」
「…いえ」
アルコールは口にしてない。
「じゃあ、人に酔っちゃったのかな。今日は随分と多いから…」
親戚が多く、交友関係の広い夏木家の式は、招待客も多く賑やかだった。
海月さんが教えている空手道場のお弟子さんが招待されていたり、信吾さんの仕事関係の人もいっぱい来ていて、かなり大規模なお式。
ばやぼやしてると、人波に飲み込まれてしまう。
「こんなときに蒼吾はなにやってんのよ。のんきにシャッター押してる場合じゃないってば。ちょっと待ってて。あたし、呼んできてあげるから」
「い、いいです! 大丈夫ですから!」
慌てて引き止める。
だって。
顔が赤い原因はたぶん、アルコールでも人に酔ったのでもなく、蒼吾くんがあんなこと言うから─────。
しばらくして、葵さんに呼ばれた蒼吾くんがカメラ片手に戻ってくる。
心配そうな表情を浮かべて。
「人に酔ったって? ましろ。あっちの人の少ない方、行くか?」
優しく背中を押されて、私は慌てて首を振った。
「ち、違うの! 蒼吾くん。人に酔ったんじゃなくて」
「なに? ジュースとカクテル、間違えたとか?」
「お酒なんか飲んでないよ…」
「じゃあ腹いてーの? 気分悪い?」
蒼吾くんは物事にきっぱり白黒つけないと、納得できない性格。
理由がわからないから、しつこく聞いてくる。
たいした理由じゃないのに、そんなおおごとにされたら、ますます言いにくくなっちゃう。
「なんでもないの。体調が悪いとか、そういうのじゃないから。……ほら行って?」
お母さんが呼んでるよ。
背中を押そうとしたら、その手を取られた。
大きな背を折り曲げた蒼吾くんが、真面目な顔で覗き込む。
「ましろ。べつに俺が主役じゃねーから、抜けても平気なんだよ。気分悪いとかなら、医務室連れて行ってやるから、ちゃんと言って」
いつだって蒼吾くんは私を優先してくれる。
そういうとこ、大好きだけど。
心配性で、大事にされすぎるのは……ちょっと、困る。
「ましろ?」
ちゃんと納得できる理由を話さなきゃ、蒼吾くんは引きそうにない。
「だって、蒼吾くんがあんなこと言うから……」
葵さんに勘違いされて。
呼ばなくていいって言ったのに。
だから。
ああ。
言いたいことがめちゃくちゃだ。
「なんか俺、マズイこと言ったっけ?」
「だって……」
本気にしちゃうよ?
─────なあ、ましろ。いつか、オレの為に着て?
甘い囁きはいつまでも耳に残る。
嬉しくって、くすぐったくて、思い出すたびに私の頬を熱くする。
きょとん、と。
目を丸く見開いて私を見つめていた蒼吾くんが、目元を柔らかくした。
「ぶぁーか。 冗談でそんなこと言うか!」
照れ隠しに軽く私の頭を小突いて、満面の笑みをくれた。
なんでもないみたいに言うくせに、耳が真っ赤になってる。
そんな蒼吾くんを見てたら、胸の奥がきゅっとなる。
……ああダメ。
今日はいつも以上に涙腺がゆるくなってる。
油断してたら、簡単に泣きそうだ。
嬉しくて、でもどこか苦しくて。
涙をこらえて下を向いたら、蒼吾くんがそっと私の手を取った。
「一応、あれでも本気のプロポーズだから。いつか、返事……聞かせてくれる……?」
いつか、なんて。
待たなくてもいい。
本当は、今すぐにでもここからさらってほしいぐらいなのに─────。
耳届くか届かないかの小さな声は、いつも簡単に蒼吾くんの心に届いて。
あたしの心を柔らかく抱きしめてくれる。
彼はいつだってそうしてくれた。
だから、大好き。
「フラワーシャワーが始まるって! 行こう!」
人波が大きく動いた。
平均よりもずっと小さな私の身長は、人混みに紛れると簡単に隠れてしまう。
蒼吾くんが庇うように私の肩を抱いた。
髪をぐしゃぐしゃっとして、突然に私の瞳の奥を覗き込むように、体勢を低くした。
トン、と。
唇が触れたのは、ほんの一瞬で。
慌てた私が真っ赤になるよりも先に。
「約束なっ」
真っ直ぐな瞳を細めて、清々しいほどに笑ってそう言った。
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]]> イラストでお題 『抱きしめて耳元で囁く』 http://miimama.jugem.jp/?eid=445 2011-09-24T00:41:00+09:00 2011-09-24T00:23:22Z 2011-09-23T15:41:00Z
本日。
イラストでお題。『抱きしめて耳元で囁く』を裏ブログにて公開しました。
はづきのイラストをもとにした『とわの彼方に』の短編読みきりです。
新作よりも早く書けたので、先に公開します。
ていうか、こっちに時間を取りすぎて新作が形になってなーい(涙... りくそらた 更新とお知らせ
本日。
イラストでお題。『抱きしめて耳元で囁く』 を裏ブログにて公開しました。
はづきのイラストをもとにした『とわの彼方に』の短編読みきりです。
新作よりも早く書けたので、先に公開します。
ていうか、こっちに時間を取りすぎて新作が形になってなーい(涙)
いかんいかん。
内容は、甘めちょいエロ。
年齢制限をかけるほどではないかなーと思うけれど、イラストがR指定寄りなので、本館から外します。
そういう描写の苦手な方はご注意ください。 ]]> 次回作決定 http://miimama.jugem.jp/?eid=443 2011-09-12T10:17:00+09:00 2011-09-12T01:23:50Z 2011-09-12T01:17:00Z 次回作へのたくさんの投票とリクエストをありがとうございました!
結果は以下になりました。
1位
『キスとあたしとチョコレート(仮)』新作 69票
2位
『Love Letter』魔法のコトバ*続編 68票
3位
とわの彼方に*続編(読者さま追加項目)... りくそらた 更新とお知らせ
結果は以下になりました。
1位
『キスとあたしとチョコレート(仮)』新作 69票
2位
『Love Letter』魔法のコトバ*続編 68票
3位
とわの彼方に*続編(読者さま追加項目) 49票
4位 『恋愛コンプレックス』 11票
5位 ましろちゃん、そーごくん大好き(*´∀`*) (追加) 6票
6位 全部(追加)
とわかな。奏多主役のスピンオフ (追加) 5票
8位 『青春ライン』(追加) 3票
以下 春を待つ君に、資本論 その他
ということで。
次回作は、『キスとあたしとチョコレート(仮)』に決定しました!
いやぁ、逃げ切りましたね、新作。
一票差ってスゴイ……(笑)
抜きつ抜かれつ、途中経過はまほコト続編の投票数の方が多い時間もあって、まほコト決定かな?って思ってたけれど、ほんとギリギリで逃げ切った!
(5位のましろちゃん、そーごくん大好き(*´∀`*) は、まほことの追加票にするべきか迷ったけれど、それをやるとややこしくなるので、別票とさせていただきました。
あしからずー)
3位のとわかな。続編は読者様による追加項目にもかかわらず、支持率高くて。
まさかこんなに票数が入るとは思いませんでした。
これは自分の中でフラッグを立ててなかったので、もし1位をとったらどうしよう!結婚しちゃったのに、続編なんて考えられないよー(涙)と、票が増えるたびにヒヤヒヤ(苦笑)
3位で終わってくれてよかった!とホッとする自分が今ここに…(笑)
だけどやっぱり作者としては、とわとともひろが愛されてることが嬉しいかったので、ベタ甘OKならば、どこかで息抜きに読みきりでも、書こうかな。
結婚しちゃったので、もうそれだけみたいな話もアリ!?
時々、裏も覗いてみてください。
次回作は短めです。
短編ではないけど、まほコトやとわかな。ほど長くないし、伏線もほとんど張ってません。
切なさよりも、ドキドキ要素が強めな作品になるかと思います。
肩の力を抜いて、楽しんでいただたら幸いです。
イラストも含めて、月末までには何とか形にできたらな。
またお付き合いください。
(以下は、投票の際にいただいたコメントです。たくさんたくさん、ありがとうございました!)
■Love Letter〜魔法のコトバ*続編
*続編ぜひ読ませていただきたいです^^
*ましろちゃんと蒼梧君カップルのお話が読みたいです。魔法のことばに一票!
*魔法のコトバの続編が読みたいです^^青春ラインや春を待つキミに。も読みたいです。
*まほコト大好きなのです*
*毎日来てましたw頑張ってくださいっ☆
*大好きな作品です!
*どの作品も大好きですが魔法のコトバの蒼吾くん視点が好きです
*どれもみんな読んでみたくて選べない!でもやっぱり私はこれかな(^^♪
*いつも更新ありがとうございます。これからもお体に気をつけて頑張って下さい。次回の更新が楽しみです。
*無理なさらずに、頑張ってください!楽しみにしてます^^
■恋愛コンプレックス〜とわの彼方に*スピンオフ
*鈴ちゃんの存在がずっとずーっと気になっていたので!
*密かに楽しみにしてました。とわの彼方にの大ファンです。楽しみにしてます。
*金子くんに幸せをあげたい
■キスとあたしとチョコレート
*楽しみにしておりま〜
*衣装作りお疲れさまです(^^)新作楽しみにしています
*また、新しいお話し書いてね。楽しみにしています。
*とわの彼方に 続編もすごく読みたいのですが、年の差カップルも気になります。
*「キスとあたしとチョコレート」と「とわの彼方に 続編」を是非読みたいです。もちろん他の作品でも!!
*ぜひ!新作!
*ラブあま大好物ぜひ読んでみたいです
*どのお話も楽しみです。また復活をお待ちしていま〜す!!
*R指定と俺様にぞっこん(笑)
*できたら他にとわちゃんの新婚生活が読みたい
■とわの彼方に 続編 (追加)
*とわとともひろのその後が読みたいです!!!
*とわの彼方にの続編も読みたいですが、新作のキスも読みたいTTどっちも読みたいです
*蒼吾とましろがさらに成長していく過程を知りたい。
*新婚生活を見てみたい!珍しく素直でかわいいとわにメロメロなともひろとか(笑)ラブラブな感じでw
*もち!!二人のその後
*とわとともひろのラブラブな話が読みたいで〜す!!
*まだまだ、ふたりのラブラブっぷりを見てみたい。
*是非とも読みたいです。
■ましろちゃん、そーごくん大好き(*´∀`*) (追加)
*まほコト大好き!! 二人が結婚するまでのその後が読みたいです。
■全部 (追加)
*出来るなら 全部でお願いします
*「とわの彼方に」が一番好きでしたが、この際(!?)どれでもいいです、お待ちしています!
*贅沢言ってすいません。どれも魅力的で選べません‥
■とわかな。奏多主役のスピンオフ (追加)
*奏多!!!!!めっちゃ読みたいです(*^―^*) でも、本音言えば全部読みたいです((こら
■春を待つキミに (追加)
*これ大好きです。早く読みたい!
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